2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
26116002
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田口 英樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40272710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今高 寛晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (50201942)
富田 野乃 (竹内野乃) 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80323450)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 新生鎖 / フォールディング / シャペロン / リボソーム / 無細胞翻訳系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究の目的は、生化学、分子生物学、遺伝学、生物物理学などを駆使して、翻訳途上の新生ポリペプチド鎖(新生鎖)がどのような過程を経ながら立体構造を形成(フォールディング)するのか、また、新生鎖のフォールディングを助けるシャペロンの分子機構を明らかにすることである。大腸菌、出芽酵母、ヒト細胞由来の翻訳系の再構成系を中心に研究を推進し、29年度は以下のような研究を推進した。 【田口】大腸菌にて負電荷アミノ酸の連続配列などがリボソームを不安定化して、翻訳の途中終了を引きおこすこと、さらにその仕組みをマグネシウムイオンの感知機構として活用していることを発見した(Mol Cell 2017)。新生鎖フォールディングを助けるシャペロンの一つ、シャペロニンGroELがどのようなタンパク質のフォールディングを細胞内で助けるのかについてフォールディングの速度論解析をなどを行った。ショットガンプロテオミクスを用いて、細胞内での新生鎖フォールディングを大規模に調べる系を構築している。 【今高】ヒト因子由来再構成翻訳システムをベースにした人工細胞を作成し、より細胞に近いin vitro新生鎖研究システムを樹立した(ACS Synthetic Biol. 2018 7: 377)。 【富田】酵母由来再構築型翻訳システムの改良を重ね、翻訳アレストやフレームシフトを高い精度で評価できるシステムを確立した。システムを利用し、eIF5A、eEF2、eEF3、Stm1などの翻訳伸長因子の機能解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下に示すように、当初の計画を大きく超えて新たな研究を展開できている。 【田口】1)本研究では当初細胞内での新生鎖のフォールディングに焦点を絞っていたが、新生鎖研究を進める中で、新生鎖の合成途上で起こる通常ではないリボソームの振る舞いを発見した(新生鎖に依存したリボソーム不安定化:Mol Cell 2017)。これは、終止コドンに依存しない翻訳の終結という見方ができるため、新生鎖そのものが自らの機能発現に積極的に関わる新たな例を見出したと言える。現在、この現象の発見を契機として、より普遍的に終止コドンに依らない翻訳終結を解析している。これは従来想定されている遺伝子読み枠(ORF)の考え方を拡げるという点でも興味深いと考えている。2)シャペロニンGroELが細胞内でフォールディングを助けるタンパク質(GroEL基質)をGroEL非依存に変換するためのスクリーニングを行った結果、点変異でGroEL依存性をスイッチすることができ、さらにはその変異がフォールディングの性質をどのように変化させるかについて特徴を解析することができた。3)ショットガンプロテオミクスを使うことで、細胞内のタンパク質恒常性(プロテオスタシス)をプロテオームレベルで解析できるようになってきた。 【今高】再構成型人工細胞体の中で合成したハンチントン病の原因タンパク質が、生きた細胞内と同様の凝集を呈した。つまり、タンパク質凝集病の一端を試験管内で再現し解析できるシステムを樹立できたと言える。 【富田】今年度は特に、連続プロリン配列による翻訳アレスト機構と翻訳後修飾がなされていないeIF5Aの役割について従来の研究計画以上に明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
【田口】1.新たに見出した負電荷アミノ酸翻訳時のリボソーム不安定化現象の分子機構や生理学的意義をさらに明らかにする。2.新学術領域のサポートを受けて導入した質量分析装置を用いた定量的ショットガンプロテオミクスをさらに推進する。さまざまな研究が推進できる例として、新生鎖、すなわちリボソームにまだ留まっているペプチジルtRNAの大規模解析、タンパク質フォールディングやシャペロンとの相互作用の相関の大規模な調査、翻訳因子やシャペロンの翻訳後修飾の網羅解析とその生理的意義の解明などがある。3.大腸菌で実施した大規模な翻訳一時停止解析を出芽酵母など真核細胞へ拡張する。また、新生鎖に依存したリボソーム不安定化現象についても出芽酵母やヒト細胞にて起こっているのか解析を進める。この真核細胞への拡張では分担者の今高・富田グループと既に共同研究を始めており、新学術領域のプラットフォームのサポートを受けた有意義な共同研究となりつつある。 4.生細胞内での翻訳の可視化技術を用いて、細胞内での翻訳速度調節、翻訳時フォールディングを可視化する。(国際支援班によるサポートを受けた国際共同研究) 【今高】ヒト因子由来完全再構成システムとそれを基盤とした人工細胞を用いて、細胞骨格タンパク質であるアクチンの合成、フォールディング、線維化を行う。それによりアクチン関連遺伝病の解析を行う。また、この再構成システムを領域内メンバーに供与することにより共同研究を続行する。 【富田】シャペロンによる翻訳伸長制御機構の解析や、tRNAの再構成に取り組む予定である。また、また、この再構成システムを領域内メンバーに供与することにより共同研究を推進する。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] Tight interaction of eEF2 in the presence of Stm1 on ribosome.2018
Author(s)
Hayashi, H., Nagai, R., Abe, T., Wada, M., Ito, K. & Takeuchi-Tomita, N.
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Journal Title
Journal of Biochemistry
Volume: 163
Pages: 177~185
DOI
Peer Reviewed
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