2014 Fiscal Year Annual Research Report
新生鎖の立体構造形成を支えるジスルフィド形成システムの解明
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
26116005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲葉 謙次 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (10423039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門倉 広 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70224558)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質品質管理 / ジスルフィド結合 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物の分泌タンパク質や膜タンパク質の細胞質外ドメインは、リボソーム上で合成されつつ小胞体内腔へと移行する。この新生鎖にPDI等(20種類以上存在)の酵素が作用してジスルフィド結合が形成される。この際個々のジスルフィド結合の形成は、新生鎖の合成・局在化・立体構造形成反応とカップルし進行していくと予想されるがその実態は不明である。申請者らは大腸菌でこのようなプロセスを観察するためのジスルフィド結合形成モニタリングシステムを開発しその過程を調べることに成功した。平成26年度は哺乳動物細胞で同様のシステムを利用すべくその開発に着手した。本システムは次の4つの要素からなる:1) パルスチェイス実験;2) 細胞中で形成されるジスルフィド結合形成反応中間体の安定化;3) 新生鎖の精製;4) 二次元電気泳動によるジスルフィド結合形成反応の解析。解析の対象とする基質としては、血中糖濃度の制御に働くインスリン、脂質代謝に重要なLDL受容体、低酸素条件下誘導される血管内皮増殖因子、大腸菌アルカリ性ホスファターゼを選び、解析のための材料を構築した。本システムで新生鎖を精製・観察するためにはシグナル配列切断点のC末端側にタグを挿入する必要がある。LDL受容体では、タグの挿入がタンパク質の立体構造形成に影響しなかったため、LDL受容体をモデル基質として利用することにした。更に、工夫の結果、1)から3)の条件を最適化し、新生鎖におけるジスルフィド結合形成過程を詳しく調べるための準備を整えることに成功した。また、その過程で、tRNAを保持した新生鎖の精製にも成功した。後者は当初デザインしたシステムには必須ではないが、今後の解析に役立つ筈である。更に、低分子化合物BPAがPDIの酸化を特異的に阻害することを見出した。本物質は新生鎖の立体構造形成過程におけるPDIの役割の解明に役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質の個々のジスルフィド結合の形成は、新生鎖の合成、局在化および立体構造形成反応等とカップルし進行していくと予想されるが、その実態は不明である。哺乳動物細胞の分泌タンパク質や膜タンパク質の新生鎖の立体構造形成を理解するために、平成26年度は哺乳動物細胞でこのような反応を解析するためのジスルフィド結合形成モニタリングシステムの開発に着手した。先述したように本システムは次の4つの要素を組み合わせて作製する:1) パルスチェイス実験;2) 細胞中で形成されるジスルフィド結合形成反応中間体の安定化;3) 新生鎖の精製;4) 二次元電気泳動によるジスルフィド結合形成反応の解析。本研究ではジスルフィド結合形成反応の中間体を安定化するために細胞をTCAで処理するが、TCA処理後のタンパク質の可溶化が困難で新生鎖の精製過程で予想外の条件検討が必要になった。そのため実験がやや遅れた。しかし、様々な工夫の結果、LDL受容体を材料に1)から3)の条件を最適化することに成功し、新生鎖におけるジスルフィド結合形成過程を詳しく調べるための準備を整えることに成功した。平成27年度は、4)の解析を進める。この解析から、合成翻訳途上のLDL受容体においてポリペプチド鎖がどの長さまで伸長した時に酵素との間に複合体が形成され、更にペプチド鎖がどこまで伸長したときにジスルフィド結合が導入されるのかが明らかになるはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、以下の3つのアプローチにより、新生鎖にジスルフィド結合が形成される機構の解析を推し進める。 ①新生鎖のジスルフィド結合形成をモニタリングするシステムの開発と利用 平成26年度に引き続きジスルフィド結合形成モニタリングシステムの開発と利用を継続して進める。平成26年度には本システムを構成する4つの要素のうちの3つに関して条件を最適化することに成功した。平成27年度は、最後の要素を含めた実験を進める。この手法から合成翻訳途上のLDL受容体において新生鎖がどの長さまで伸長した時に酵素との間に複合体が形成され更にどこまで伸長したときにジスルフィド結合が導入されるのかを明らかにする。 ②新生鎖と相互作用する酵素の同定 ①の解析で酵素-基質複合体が検出できればその解析からLDL受容体の新生鎖へのジスルフィド結合に働く酵素を同定する。しかし、このような複合体は新生鎖が伸長する過程で一過的に形成され、その検出が難しい可能性もある。その場合には、ペプチド伸長を遅延させるアレスト配列を利用する予定である。このような解析から伸長中の新生鎖にどのような酵素がどのような順番で相互作用し、ジスルフィド結合が形成されるのかを明らかにする。 ③新生鎖のジスルフィド結合形成過程を試験管内で解析するための系の開発 田口英樹計画班の今高寛晃は、ヒト細胞由来成分からなる無細胞タンパク質合成システムを既に開発している。しかし、このシステム中には高濃度の還元剤が含まれるため、ジスルフィド結合形成反応を調べる際に問題になる。そこで、還元剤を含まない無細胞タンパク質合成システムを構築するなどの方法によってこの問題を解決する。その後、ジスルフィド結合導入酵素と基質である新生鎖の間で行われる相互作用を試験管内で再現し、種々の構造生物学的手法及び生物物理学的手法を用いて分子構造レベルで詳細に解析する。
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[Journal Article] Inhibition of the functional interplay between ER oxidoreduclin-1α (Ero1α) and protein disulfide isomerase (PDI) by the endocrine disruptor bisphenol A.2014
Author(s)
Okumura M., Kadokura H., Hashimoto S., Yutani K., Kanemura S., Hikima T., Hidaka Y., Ito L., Shiba K., Masui S., Imai D., Imaoka S., Yamaguchi H. , Inaba K.
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Journal Title
J. Biol Chem.
Volume: 289
Pages: 27004-27018
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Progressive quality control of secretory proteins in the early secretory compartment by ERp44.2014
Author(s)
Sannino, S., Anelli, T., Cortini, M., Masui, S., Degano, M., Fagioli, C, Inaba, K., Sitia, R.
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Journal Title
J. Cell. Sci.
Volume: 127
Pages: 4260-4269
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Radically different thioredoxin domain arrangement of ERp46, an efficient disulfide-bond introducer of the mammalian PDI family2014
Author(s)
Kojima, R.†, Okumura, M.†, Masui, S., Kanemura, S., Inoue, M., Saiki, M., Yamaguchi, H., Hikima, T., Suzuki, M., Akiyama, S. and Inaba, K.
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Journal Title
Structure
Volume: 22
Pages: 431-443
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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