1989 Fiscal Year Annual Research Report
大規模人為気候変化の我国の自然生態系・農業と社会システムへの影響評価に関する研究
Project/Area Number |
01300007
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
内嶋 善兵衛 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (70193886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 友章 気象研究所, 応用気象研究部, 室長
清野 豁 農業環境技術研究所, 環境資源部, 室長
大島 康行 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (40063250)
浦部 達夫 名古屋大学, 大型電算機センター, 教授 (90022706)
大北 威 国立名古屋病院, 院長
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Keywords | 温室効果 / CO_2気候暖化 / 純一次生産力 / 植生帯分布 / 土壌有機物 / 気候モデル / 放射能拡散 / 大気拡散モデル |
Research Abstract |
CO_2など温室効果ガスの濃度上昇による気候暖化の日本の植物気候と植生分布への影響を研究した。大循環気候モデルからの2CO_2気候変化シナリオを用いて、温量指数・寒さ指数の変化をしらべた。落葉広葉樹林と常緑広葉樹林との境界が、現在の関東山麓から東北地方の北部へ移動し、南西日本の多くの地方で高温ストレスが発生することが予想された。大循環気候モデルからえられた世界気候変化を用いて、世界の自然植生の一次生産力への2CO_2気候暖化の影響を評価した。その結果、乾天の多くなる地域を除いて、かなりの地域で一次生産力は数パ-セント増加すると予想された。しかし、この結果については気候変化への植生の移動度をさらに検討することが必要である。 CO_2気候暖化の土壌有機物量への影響を明らかにするため、2080年までの気候変化シナリオを用いて有機物分解量と必要補給量を評価した。その結果、2050年頃には2〜3℃の温度上昇により、土壌への必要補給量は15〜20%増大することが予想された。これは土壌肥沃度が気温上昇によって劣化することを示している。 地球気候モデルと大規模拡散モデルとを用いて、放射性物質の地球的広がりをシミュレ-ションした。その結果をチェルノヴィリ原発事故による放射能拡散デ-タと比較し、両者はかなりよく一致することを見出した。さらに、地域気候モデルを用いて広島・長崎での核爆発による汚染大気の広がりをシミュレ-トした。その結果を用いて、両都市の周辺における放射能の分布を評価し、戦後の観測結果と比較した。両者はかなりよく一致し、地域気候モデルおよび粒子拡散モデルによる放射能汚染のシミュレ-ションは、放射能汚染の地球的および地域的な拡散の評価に有効と結論できた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 吉川友章: "煙とガスと放射能を追う(I,II)" 天気. 36. 485-488,561-564 (1989)
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[Publications] 吉川友章: "煙とガスと放射能を追う(III)" 天気. 36. 621-623 (1989)
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[Publications] 清野豁: "CO_2濃度上昇による気候暖化の土壌有機物分解への影響" 農業気象. 46. (1990)
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[Publications] 内嶋善兵衛: "CO_2気候暖化の我国の植物気候と植生帯分布への影響" 環境科学. (1990)
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[Publications] 内嶋善兵衛(訳・著): "地球大気の歴史-過去・現在・未来を探る" 朝倉書店, 198 (1989)