Research Abstract |
本年度においても,昨年度と同じく,研究分担者は,各自の分担課題に従い,これまでに蓄積されてきた,また本年度において新たに蓄積された資料に基づいて,研究を深化させた。ただし,本年度は,昨年度と異なり,研究方法の重点を地域比較に移し,そのために,ほぼ毎月,計10回の研究例会をもつとともに,下述するように,1990年10月には,科研重点領域「イスラムの都市性」D班との共催でフォ-ラムをもち,極めて有益な意見交換をおこなうことが出来た。なお,研究例会のテ-マを列挙すれば,以下の通りである。「歴史における再分配社会」「11,12世紀シチリアのアドミラル(アミ-ル)」「アルドゥアン・ドュマゼの『フランス紀行』」「『世界経済』の形成とポルトガル香料交易」「ロシアの旧教徒ー分離派教徒ー」「ナイル川開発と環境問題ーアスワン・ハイダム建設の影響を中心にー」「徴兵免除嘆願書にみる19世紀中葉エジプト農村社会」「初期ビザンツにおける教会寄進と国家機構」「バイイとセネシャルーフィリップIV世美男王治世下の仏の地方行政制度ー」「14世紀のロシアについて」。 本年度研究のハイライトは,1990年10月8日,一日をかけて一橋大学で実施されたフォ-ラムの開催であった。テ-マは,「宗教と政治」。フォ-ラム開催の意図は,現在,イスラム世界のみならず地球規模でみられる宗教の復権を,地中海世界が生み出した三つのー神教,つまりユダヤ教,キリスト教,イスラム教の比較を通して明らかにし,あわせて,ヘブライ世界,ビザンツ世界,西ヨ-ロッパ世界,そしてイスラム世界において「宗教」と「政治」がどのような結びつき方をしてきたか,そして,その結びつき方が各世界の政治構造,住民のメンタリティにどのような特徴をもたらしたかを検証するというスケ-ルの大きな企図であった。参加人数は40名を越え,大変に盛会であった。
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