1989 Fiscal Year Annual Research Report
フ-リエ変換紫外・可視・近赤外励起ラマン分光法の開発とその構造化学への応用
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01430004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田隅 三生 東京大学, 理学部, 教授 (60011540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 行夫 東京大学, 理学部, 助手 (50156965)
林 秀則 東京大学, 理学部, 助手 (60124682)
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Keywords | フ-リエ変換ラマン分光法 / 構造化学 / 導電性高分子 / ポリアセチレン |
Research Abstract |
本年度は、可視から近赤外領域まで測定可能なフ-リエ変換赤外分光光度計(日本電子(株)JIRー5300S)を購入し、まず、1064nm励起で使用できるフ-リエ変換ラマン分光装置を組み上げた。ラマン散乱光は後方散乱により集光し、レイリ-散乱光除去には、誘電体蒸着長波長透過フィルタ-を3枚用い、検出器には、InGaAs検出器を使用した。この装置では、最高2cm^<-1>の分解波数幅で、400〜3000cm^<-1>(InGaAs、液体窒素冷却時)のラマンシフトの範囲を測定することができる。アントラセンなどの幾つかの低分子の測定を行い、装置の性能を検査した。アントラセンでは、レ-ザ-出力130mW、分解波数幅4cm^<-1>,1回走査(約5秒)で、最も強いバンドに対して信号雑音比50以上のラマンスペクトルを得ることができた。ラマン散乱の励起光を可視から近赤外光にすると波長の4乗に比例してラマン散乱強度が弱くなるが、フ-リエ分光器の明るさでその分を補償できることがわかった。来年度は次の段階として、可視から近赤外領域の光を励起光としてラマンスペクトルを測定できるようにする予定であり、本年度に購入したアルゴンイオンレ-ザ-(Coherent社Innova90ー6)は、その光源として、また、同じく光源として使用する色素レ-ザ-の励起に用いる。 1064nm励起のフ-リエ変換ラマン分光法の構造化学への応用として、導電性高分子の測定を行なった。ヨウ素なナトリウムを多量にド-プしたポリアセチレン〔〓CH=CH〓_x〕のスペクトルを測定することができた。1064nm光を用いることにより、可視励起では得られなかったド-プされた領域のラマンバンドを観測することができ、ヨウ素とナトリウムド-プでは、ド-プされた領域の構造が異なることがわかった。今後、導電状態の構造解析に役立つと期待される。来年度は、導電性高分子のほかに光合成細菌やタンパク質の測定も行なう予定である。
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