1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01440063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 康弘 名古屋大学, 医学部, 教授 (50028669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若宮 伸隆 大阪大学微生物病研究所, 助手 (20210867)
三毛 紀夫 名古屋大学, 医学部, 助手 (20192354)
東 佳世 名古屋大学, 医学部, 助手 (50202619)
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Keywords | がん遺伝子 / Cーmyc / Nーmyc / 吸入麻酔薬 / HLAーDR抗原 / ICAMー1 |
Research Abstract |
ヒト白血病細胞株にハロセンを暴露し転移増殖に関連するがん遺伝子の1つであるCーmycの発現を蛋白半定量することにより計測した。ハロセンはCーmycの発現に影響を与えないことが判明した。さらにヒト神経芽細胞腫株IMRー32にハロセンを高濃度・長時間暴露したが、神経芽細胞腫の予後に密接に関連するがん遺伝子であるNーmycの遺伝子増幅をサザンブロッティングを用いて解析した。細胞数は減少し増殖は抑制されるが、Nーmyc遺伝子の増幅はまったく抑制されなかった。以上2つよりmycがん遺伝子群、つまり細胞増殖に重要とされる核内蛋白をコ-ドするがん遺伝子では吸入麻酔薬ハロセンで影響をうけないのであろうと考えられる。この機序は不明であるが増殖が著しい遺伝子の部分には麻酔薬は影響を与えないのかもしれない。これらは平成2,3年の日本麻酔学会に発表した。 上記の実験のために作成した細胞麻酔システムを用いて、ヒトメラノ-マ細胞に各種吸入麻酔薬を暴露させ細胞膜上の抗原の変化をフロ-サイトメトリ-で観察した。細胞認識や抗腫瘍免疫に関連するHLAーDR抗原は吸入麻酔薬にて発現増強する。また、転移に密接に関連する細胞間接着分子(ICAMー1)の発現は吸入麻酔薬暴露により抑制され暴露を解除すると回復する事を見出した。in vitroであるが、吸入麻酔薬はメラノ-マ細胞にかかわる抗腫瘍免疫を増強させたり、転移を促進させたりすることが判明した。これらは日本癌学会、日本麻酔学会に発表した。本結果より今後がん患者に最適な吸入麻酔薬が見出され麻酔方法が確立されるかもしれない。
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[Publications] 三毛 紀夫: "吸入麻酔薬とがん細胞について" 病態生理. Vol10. 232-235 (1991)
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[Publications] 東 佳世: "ハロセンによるメラノ-マ細胞のHLAーDR抗原発現の変化について" フロ-サイトメトリ-. 10. 22-26 (1990)
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[Publications] K.Azuma: "Effects of halothane on HLAーDR antigen expression in the melanoma cells in vitro" Journal of Cancer Research and Clinical Oncology. 116. 293 (1990)
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[Publications] 藤原 祥裕: "ハロセンのCーmyc蛋白質に対する影響" 麻酔. 39. 5626 (1990)