1989 Fiscal Year Annual Research Report
リマン海流文化の生態地理学的研究-日本文化の北方圏からの分析-
Project/Area Number |
01450107
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
市川 健夫 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60014825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白坂 蕃 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40014790)
小泉 武栄 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30114812)
小野 有五 北海道大学, 大学院・環境科学研究所, 教授 (70091890)
山下 脩二 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80064731)
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Keywords | リマン海流 / 日本文化 / 海獣 / 古代スキ- / 北方系植物 |
Research Abstract |
本年度は北海道、東北、北陸地方の調査を実施した。その結果、以下のような点について明らかにすることができた。 1)北方系の植物であるハマナスは、日本海岸では山陰、太平洋岸では九十九里浜に達している。またモミの群落は対馬と大井川流域にまでみられる。さらに北方系のシロザケは山口県粟野川、九十九里浜の夷隅川が南限である。日本海岸の方が太平洋岸より南部まで、北方系の自然要素がみられる。これはリマン海流が親潮より南下しているからである。 2)北方系の海獣であるトド、アシカ、アザラシなどは、江戸時代から明治初期にかけて、能登半島の近くの七ツ島、犬吠崎の海鹿島まで、海獣の狩猟が生業として成立していた。また朝鮮半島の日本海沿岸でも海獣が獲られていた。現在、オットセイは能登半島まで南下してくるが、生業としての狩猟はなされていない。これは気候変動-温暖化-とともに、北方系海獣の個体数が減ったことを意味している。 3)シベリアの狩猟民族が用いてきた冬の雪上歩行具が古代スキ-で、津軽では中世から使われてきた。青森・秋田両県では最近まで、古代スキ-が利用されてきた。知床半島羅臼町では、アザラシの皮を張った単板スキ-が製造されており、狩猟に用いられている。シベリアにおけるサケの皮でつくったブ-ツは1970年まで北海道常呂町でアイヌの婦人によって製造されていた。 4)本州最北の南部地方は、中世・近世日本において畜産の先進地であった。中世シベリアから度々牛馬が南部地方に輸入されて、在来家畜と交配された。この地方の種畜は、中央日本から西日本まで送られ、牛馬の品種改良に用いられた。
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