1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01460138
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊東 謙太郎 信州大学, 工学部, 教授 (20020977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 達夫 信州大学, 工学部, 助手 (70126689)
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Keywords | 酸化物半導体 / 酸化タングステン / 水素センサ / 水素クロミズム / 光学密度 / 凝結水 / Pd薄膜 |
Research Abstract |
ガラス基板上にWO_3膜を堆積し,さらに極く薄いPd膜を堆積して水素クロミック素子を製作した。この素子を水素または重水素を1%含むアルゴン雰囲気にさらして吸光度の変化を測定し,光学密度の変化速度および変化量を算出した。水素を含む雰囲気に素子をさらした場合の光学密度の変化速度は重水素を含む雰囲気にさらした場合のそれに比べて1.5〜2倍ほど速いことがわかった。これは,WO_3膜中におけるH^+およびD^+の拡散係数が互いに異なっているためであると考えられる。 素子を真空中,アルゴン雰囲気中,空気中でそれぞれ熱処理した後,再び水素または重水素雰囲気にさらして吸光度の変化を測定した。光学密度の変化速度は処理前に比べて遅くなり,また,変化量も小さくなっていることがわかった。これは,膜中の凝結水がなくなるためと考えられ,真空中で処理した試料では波長2700nm付近のOH基による吸収帯が減衰していることが観察された。また,上記の熱処理を施した試料を水蒸気雰囲気にさらして再び凝結水を導入し,さらに吸光度測定を繰り返すと,光学密度の変化速度および変化量がある程度回復した。 以上の実験結果は,つぎのような水素クロミズムの模型によって説明することができる。すなわち,雰囲気中の水素が分離して発生するプロトンが,WO_3膜中に多数存在する凝結水を含んだ細孔をイオンチャンネルとして濃度勾配により膜内に拡散し,可逆的にタングステンブロンズを形成して着色する。したがって,本素子の動作にとってWO_3膜中に水が存在することが必要である。また,その応答はWO_3膜中の水素イオンH^+の拡散過程により律速される。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 大上 智也: "水素クロミズムの機構について" 第51回応用物理学会学術講演会 26pーMEー1(1990).
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[Publications] 大上 智也: "水素クロミズムについて" 平成2年度電子情報通信学会信越支部大会 104(1990).
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[Publications] 高橋 清: "基礎センサ工学" 電気学会, 215 (1990)