1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01480042
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
稲永 忍 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教授 (40124664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 順子 東京大学, 農学部, 助手 (60191219)
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Keywords | ナタネ種子 / 物質蓄積 / 物質転流 / カリウム / カルシウム / アブシジン酸 |
Research Abstract |
ナタネ種子における物質蓄積の停止機構を明らかにする目的の下に、最終年度の実験を行い、次の結果を得た。 種子の乾物重は、調査開始の開花後23日目(以下、「開花後」を省略)以降増加し続け、45日目に最大となり、その後成熟にかけてやや減少した。この推移から、種子の乾物増加停止は45日目、成熟は52日目と判断された。種子を種皮と胚との分けてみると、種皮の乾物重は調査期間中ほとんど変化せず、胚のそれは種子の場合とほぼ同じ推移を示した。一方、莢壁の乾物重は、若干の変動が見られたが、全期間を通じてほぼ一定であった。この間における水分含量、無機成分含量およびABA濃度の変化は次の通りである。水分含量:莢壁、種子共に31日目以降、成熟まで減少し続けた。K含量:莢壁では38日目にピ-クを示し、45日目に一時減少し、その後再び増大した。種皮では全期間中ほぼ一定であった。胚では、45日目にピ-クを示し、その後減少した。Ca含量:莢壁では成熟まで増加し続けた。種皮では、45日目にピ-クを示し、その後はほぼ一定であった。胚では、38日目にピ-クを示し、その後減少した。ABA濃度:莢壁では31日目にピ-クを示し、38日目に一時減少し、その後再び増大した。種皮と胚では、38日目にピ-クを示し、45日目に一時減少し、その後再び増大した。 以上のことから、種子の物質蓄積機能の停止機講は次のように推察される。すなわち、まず、莢壁のABA濃度の一時的上昇が契機となり、莢壁や種子の水分含量の減少が始まる。これに続いて、種皮や胚のABA濃度が一時的に高まり、それと同時に胚のCaの蓄積も停止する。その後、胚などのCaが種皮に移行し、多量に蓄積するため、種皮から胚への光合成産物やKのアンロ-ディングが妨げられ、その結果、種子の乾物重増加が停止する。
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[Publications] Nakanishi,M.T.,S.Inanaga and H.Kobayashi: "Nonーdestructive analysisi of rape plant pod by neutron radiography." Radioisotopes. 40. 126-128 (1991)
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[Publications] 稲永 忍 他: "ナタネ種子における無機成分,油脂およびアブシジン酸の含有量の発育に伴う変化" 日本作物学会紀事. 61. (1992)
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[Publications] 稲永 忍 他: "ナタネの胚のう液の糖・アミノ酸組成とそれらの種子発育に伴う変化" 日本作物学会紀事. 62. (1993)
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[Publications] 稲永 忍 他: "ナタネ種子の発育と莢内部の気体環境との関係" 日本作物学会紀事. 62. (1993)