1989 Fiscal Year Annual Research Report
アルコ-ル性肝硬変を母地として発生する肝細胞癌の発癌機序
Project/Area Number |
01480224
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井上 恭一 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (10018335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
康山 俊学 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (50174529)
樋口 清博 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (00135021)
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Keywords | アルコ-ル性肝硬変 / 肝細胞癌 / C-myc / 脱メチル化 / HCV |
Research Abstract |
目的および方法:アルコ-ル性肝硬変を母地として発生する肝細胞癌(HCC)の発癌機序を解明する目的で、HCC症例肝組織の腫瘍部および非腫瘍部組織より抽出したDNAについて細胞癌遺伝子C-mycの脱メチル化の状態を検索し、飲酒との関連を検討するとともにアルコ-ル多飲者91例におけるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染状況についても検索した。 成績:HBs抗原陰性HCC症例21例(内非飲酒者14例、飲酒者7例)の腫瘍部組織ではC-myc第2エクソンは非飲酒者の11例(79%)、飲酒者の7例(100%)に脱メチル化がみられた。第3エクソンについては非飲酒者の5例(36%)、飲酒者の4例(57%)に脱メチル化がみられたが、これらの非飲酒者群と飲酒者群の脱メチル化の頻度に統計学的な有意差はみとめなかった。これとは別にC-myc上流のrearrangementをもつ症例を3例見出した。一方アルコ-ル多飲者のHCV抗体保有率は91例中28例(30.8%)で、非特異反応、脂肪肝例、肝線維症例では陽性率は低かったが、肝硬変例では31例中9例(29.0%)、HCC症例では30例中11例(55.0%)と高率であった。 結論ならびに今後の研究方針:飲酒者HCC症例のC-myc第2、第3エクソンの脱メチル化は非飲酒者のそれより高かったものの、統計的に有意ではなく脱メチル化の観点からアルコ-ルの肝発癌に及ぼす影響を明らかに出来なかった。今後米国ピッツバ-グ癌研究所whiteside教授の協力を得て米国症例の解析を行う予定である。またC-myc上流のrearrangementを認めたことは1ツの収穫であり、今後この面からアルコ-ルとHCC発生の関連を検討する必要があると考えられた。HCCとHCV感染の関連についてはHCC症例でHCV抗体保有率が高く、HCV感染と肝発癌の関連性が示唆された。
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