1990 Fiscal Year Annual Research Report
新生児・乳児の生理的胆汁うっ滞の本態とその臨床的意義に関する研究
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01480259
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
白木 和夫 鳥取大学, 医学部, 教授 (60010229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新沢 毅 鳥取大学, 医学部, 助手 (70216216)
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Keywords | 乳児生理的胆汁うっ滞 / 初代培養肝細胞系 / human epidermal growth factor / hepatocyte growth factor / 母乳 / 乳児ビタミンK欠乏性出血症 / 母乳性遷延性黄疸 |
Research Abstract |
本年度は特に初代培養肝細胞系を用いた手法により研究を進めた。人乳、臍帯血、新生児血清中に、ラット肝細胞のDNA合成を促進する物質が存在し、その物質は、human epidermal growth factor(以下EGF)や、hepatocyte growth factorと異なることを報告したが、特に人乳添加でのラット肝細胞DNA合成促進作用は、EGFの最大作用よりも高かった。これより人乳中のEGFと相加的に働く物質の存在が示唆され、我々は、乳清蛋白の中でリンパ球増殖を促進するラクトフェリン(以Lf)について、初代培養肝細胞系に人乳由来のLfを添加し、肝細胞のDNA合成に与える影響を調べた。鉄飽和Lfと、脱鉄したLfのそれぞれの添加効果について検討を行ったが、鉄飽和Lf添加においては、Insulin+EGFの添加において認められる、[3H]ーチミジン取込み促進作用を増強する効果が見られた。脱鉄Lfにはこの作用は無く、DNA合成促進相加効果は、鉄イオンの運搬と関連して起こるのではないかと推測された。続いて成熟肝細胞に存在する酵素で、肝細胞の成熟分化の指標とされるTryptophan oxygenase(以下TO)活性を指標として、肝細胞分化誘導化物質であるデキサメサゾン、グルカゴンに加え、EGF、人乳をラット初代培養肝細胞系に加え検討した。TO活性はラット日齢により反応態度に差があったが、EGF、人乳は本酵素の誘導を明らかに促進した。即ち、人乳中には肝細胞の増殖のみでなく、成熟分化に関与する物質も含まれていることが示唆された。過去の検討で、母乳性遷延性黄疸、乳児ビタミンK欠乏性出血症に胆汁うっ滞が関与していることを報告したが、これらは母乳栄養児に発生する疾患であり、人乳中の肝細胞増殖、分化に関与する物質について、今後もその生化学的性質、精製、分離の研究を進めていく必要がある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 新沢 毅,河野 由美,長田 郁夫,白木 和夫: "乳児ビタミンK欠乏性出血症発症例の血清脂質分析" 日本小児科学会雑誌. 94. 1414-1419 (1990)
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[Publications] 新沢 毅,長田 郁夫,白木 和夫: "小児の黄疸" 臨牀消化器内科. 5. 791-801 (1990)
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[Publications] 新沢 毅,門野 勉,常井 幹生,白木 和夫: "未熟児における新生児肝炎症候群の成因について" 周産期医学. 20. 1117-1120 (1990)
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[Publications] 河野 由美,白木 和夫 武良 哲雄,猪川 嗣朗: "初代培養新生仔ラット肝細胞の増殖および分化機能に与える人乳添加の影響 第1報:growthーpromoting activityの存在" 日本小児科学会雑誌. 94. 1958-1965 (1990)
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[Publications] 新沢 毅,門野 勉,武良 哲雄,白木 和夫: "小児科学年鑑1990 小児科の進歩(分担執筆)PP111〜114" 診断と治療社, 284 (1990)