1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510060
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
近藤 文里 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (00133489)
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Keywords | 斜線 / 構成活動 / 視知覚 / 幼児期 / 発達 |
Research Abstract |
Piaget以後の斜線構成の研究は、チェッカ-盤にチェッカ-を配列する課題を多く用いた。しかし、この方法では部分(チェッカ-)から全体(直線)を構成する過程が含まれるため、空間内に直線をどの程度正確に配置することができるのかについては明らかにできなかった。 そこで、本年度は従来とは異なる斜線構成の方法として、棒を空間内に配置させる課題を幼児を対象に実施し、空間的枠組み(円形枠と正方形枠)がそのような課題の遂行に与える影響について発達的に検討した。 その結果、(1)見本として呈示した斜線と同じ傾きになるように直線を配置する課題では、年少児(3:6〜4:5)、年中児(4:6〜5:5)、年長児(5:6〜6:5)と年齢の増加に伴ない誤差角度が減少すること、(2)特に年少児と年中児の間に著しい差が認められること、(3)どの年齢児でも円形枠より正方形枠で誤差が少ないこと、が認められた。 以上の結果は、棒配置実験と併せて行ったチェッカ-構成実験の結果とよく近似することが認められた。ただし、被験児の反応を量的に分析できるという点では、棒配置課題で誤差角度を求める方法が有効であり、反応指標として鋭敏なものであることが明らかとなった。 さて、棒を配置する時に生じた誤差は、知覚段階で既に生じるものなのか、それとも構成(定位)する段階で生じたのだろうか。このような疑問が生じた。そこで、2つの斜線を知覚し、その異同を判断する実験を行なった。その結果、このような2斜線の異同判断は枠組みの形態にとらわれず正確にできること、つまり、知覚段階では棒配置の誤差が生じることはないことが明らかになった。 従って、幼児においてみられる斜線構成の困難は、知覚段階に原因があるのではなく、行為した結果をフィ-ドバックする機能(一度配置した棒の位置を修正する)の未熟さによると推察した。
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