1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510200
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
杉谷 昭 佐賀大学, 教育学部, 教授 (30039200)
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Keywords | 鍋島直彬 / 原忠順 / 上杉茂憲 / 岩村通俊 / 西村捨三 / 尚泰王 / 人民血盟書 / サンシイ(賛成)事件 |
Research Abstract |
本年度の研究も初代県令鍋島直彬文書を中心とするものであったが、沖縄県立図書館のご協力によって、すべてマイクロフィルムによる収録が完了した。鍋島直彬書簡は、第二代県令上杉茂憲関係史料(『沖縄県史料(近代四)』所収の四通もあるが、県官採用や県治上の県民からの歎願などをはじめ基本的な問題点を前任者として上杉に対し忠告している内容のものもあり、鍋島宛上杉書簡と照合することによって、県官人事が県治上重要な問題点のひとつであったことがわかる。県官採用については、鍋島・上杉・岩村通俊(第三代県令)および元老院議官柳原前光などの文書のやりとりから鹿児島士族,旧鹿島藩(鍋島支藩)などに片よる点が問題であったことがわかる。鍋島文書中には西村捨三(第四代県令)の書簡があり、明治十二年六月の藩王(尚泰)上京のようすや、柳原前光の日清談判に関して鍋島の熟慮を希望(宮古・八重山分島問題)していることなど注目すべき内容がわかる。鍋島文書中には「サンシイ事件」に関する大隈重信宛直彬書簡もあり、沖縄県士族人民血盟書抜書も同封されていてこの事件の真相をみる貴重史料となる。明治十三年十二月二十七日付、岩倉具視宛直彬書簡などから、鍋島県政に対する中央政府の批判が起っているようすを知ることができ、他の岩倉宛書簡によって人民血盟書による沖縄県から琉球藩への復藩運動の起りが、鍋島県令更迭の原因のひとつであったこともわかる。 県民の側に立った鍋島県政は、上杉宛書簡などによっても、県令の職を離れた後まで県治に配慮していることなどからも推察できる。 平成三年度は、さらに直彬のもとにあった県大参事・原忠順文書(琉球大学図書館所蔵)を整理して、マイクロフィルムに収録完了し、鍋島文書・上杉文書・岩村文書などと照合・検討することによって、初期沖縄県政の実態を明らかにしていきたい。
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