1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510200
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
杉谷 昭 佐賀大学, 教育学部, 教授 (50011911)
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Keywords | 琉球処分 / 琉球藩(王) / 鍋島直彬 / 上杉茂憲 / 岩村通俊 / サンシイ事件 / 旧慣温存(主義) / 分島・改約(問題) |
Research Abstract |
今年度の研究課題であった「鍋島直彬沖縄関係文書」のの増要部分をマイクロフィルムに収めることができた。しかしこれと密接な関係にある「原忠順文書」(琉球大学附属図書館蔵)が未整理のため、明治14年5月10日付、鍋島直彬宛、原忠順書簡によって、初代県令鍋島直彬の更迭の事情が詳細にわかった。従来説明されていた事情とは異なり、内務卿松方正義と鹿児島商人たちの策謀により、鍋島県令は苦境に立たされた。内務省内の庶務局・会計局などの部局も岩村通俊のもとに反鍋島の態勢をとっていた。「鍋島彬直沖縄関係文書」には岩倉具視の貴重な文書8通と同公文書1通がある。明治14年4月12日付の公文書による上京命令と鍋島県令の着京届(4月15日付)が入れちがいになり、内国勧業博覧会観覧のための上京というのは表向きのことであって、岩倉や大隈重信(参議)・佐野常民(大蔵卿)などが好意的に鍋島県令の立場を理解しようとしていたことがわかる。しかし鍋島県令としては、かたくなに県政の実情と自らの施策を内務卿に弁明し、免職を覚悟で詰問しようとした。以上のことは、鍋島県政の終局において、松方内務卿との対立について従来、未解明の事件であるが、旧藩王尚泰一族に関する処置についても岩倉書簡によって解明できるし、従来の『沖縄県史』(史料編)のみでは、その歴史的な経過が明らかにされていなかった事情が、これら未公開(刊)の史料によって明らかにすることができた。同様の作業は上杉茂憲(県令)・岩村通俊(県令)の第2・3代県令の関係文書によっても進めることが必要であり、さかのぼってペリ-来航関係史料によって幕末開国期における琉球王国が、日本の開国事情の中にどう位置づけられるかも考察しなくてはならない。この研究を今後の研究課題として10年計画ぐらいで完結したいと考えるものである。
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Research Products
(1 results)