1990 Fiscal Year Annual Research Report
海軍工廠における技術開発と技術思想の変容に関する史的分析
Project/Area Number |
01530043
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹内 常喜 広島大学, 経済学部, 教授 (90093773)
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Keywords | 海軍技手養成所 / 海軍艦政本部 / 技術開発 / 日本的労使関係 |
Research Abstract |
3年計画で海軍艦政本部および海軍技手養成所の関係者からの聴調を進め、一方で文献研究と資料収集を行っている。技手養成所出身者からの聴調は30名を越え、同所の社会的性格を明らかにしていくための手懸りはかなり得られたものと考えている。日本的労使関係においては中間層の養成機関として設立された企業内教育機関や中等実業教育機関が当初目的の範囲を越えた社会的機能を持ち易いことが確認できたように思われ、それを追及しようとしているのが次頁の第一論文である。当論文では技手養成所出身者の海軍工廠時代とそれ以降の社会的移動を追跡するところから、改めて技手養成所の社会的性格を明らかにし、そのことが日本の雇用慣行の歴史的条件と深く絡っていることを示すことに力点をおいている。当初は1990年度中に発表の予定であったが、東京の関係者の遺族の方から膨大な手記・遺稿を拝借する機会を得たため全面的に手直しをして発表の予定である。 第二年度は主として艦政本部関係者の方々の資料収集と聴調に力を入れてきた。日本の技術開発の全過程を通じて技術の社会的背景や、その応用を通じて模索されるグランド・デザイン力の弱さが何故に原因しているのかという点に長く疑問と関心を持ってきたが、まだ十分に納得できる説明根拠を得るに至っていない。技術開発のトップが中間層との間で形成するインフォ-マルな人間関係が稠密なのに対して、エリ-ト集団内部のコミュニケ-ションが貧困であることに注目はしているが、内藤初穂氏ら光学の見解にも学びつつ、もう少し核心に迫る努力をしたいと考えている。中間的な報告は次頁の第二論本で行う予定である。
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