1991 Fiscal Year Annual Research Report
海軍工廠における技術開発と技術思想の変容に関する史的分析
Project/Area Number |
01530043
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
竹内 常善 広島大学, 経済学部, 教授 (90093773)
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Keywords | 日本の技術史 / 日本の、思想 / 造船技術 / 海軍工廠 / 海軍艦政本部 / 海軍技手養成所 / 造船官 / 内部登用制度 |
Research Abstract |
海軍関係の新刊書が多く出版され、それらの検討に追われた。海軍技手養成所の形成と機能に関する中間報告書を作製して、関係書に送付し、それに対する関係各位の意見・批判を参考に報告書の手直しに入った。これまで企業内養成機関として同養成所は研究史上で紹介されてきた。ところが、海軍工廠では別に見習工制度がおかれており、そのための職工教習所が養成工制度の中心として機能しており、技手養成所はその見習工の中から一部優秀な人材を推薦登用していくための機関であり、単なる中堅職工養成機関ではないことが分ってきた。更に1930年代における急速な雇傭規模の拡大は、それら内部登用制度の性格を急変させていったことも明らかに出来た。こうした事から技手養成所と職工教習所の性格を個々に評価するだけでなく、時期的にも区分して分析する必要が生じた。更に、こうした制度は初め昭和に入って整備されてきたのではなく、既に明治期に降存在していて、一時期に断絶した後に復活整備されていたことも分った。このため制度史全体の見直しも必要となった。一方、帝国大学の卆業生を中心とする技術革新の中心的担い手のうち、造船部門を担った造船官については研究が容易であったが、他の造機・造兵部門については手懸りを得ることが難しいことが明らかとなった。そのことは研究史上の疎密の問題だけではなく、技術開発史における我国の基本体質とも係わっていることが明らかとなってきた。海軍における技術開発の歴史は、団兵上の要求と内在的に係わっている。にも拘らず、団兵と技術は断然と区分され、かつ団兵の下位に技術がおかれ、軍の本流とはなり得なかったところにアメリカ等との差異がある。その事が日本の技術開発に固有の性格と特性を与えることになっていたが、技術史および技術思想史上の課題を追究する上での貴重な中間考察が出来たものと考えている。
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