1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 邦夫 東京大学, 農学部, 助教授 (40203898)
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Keywords | 公有林 / 多面的利用 / 林地転用 / 山梨県有林 / 公共的使命 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年における公有林の林業的利用の一面化に対する見直しの方向としての多面的利用の進展に着目し、その方向がどこまで進んでいるか、それらの実態を整理・分析し、そこに提起される問題点を解明することを通じて、今後の公有林のあり方に関して政策的提言を行うことにある。 平成3年度においては、若干数の公有林において多面的利用実態に関する事例補足調査を実施するとともに、それらの結果と過去2年間に実施した事例実態調査結果を整理して、問題点の抽出を行うなど本研の取りまとめを行った。その概要は以下のとおりである。 最近の公有林における多面的利用は、山梨県有林において典型的にみられるように、林地転用を伴ってここ数年間に著しく進展してきいることが確認できた。しかしながら、この進展は公有林における林業経営の「赤字」脱却に主要な契機があるため、その多面的利用の内実は、近年の「リゾ-ト」ブ-ムの中で専ら地代収入の増加を狙いとした、林地転用を伴う別荘、ゴルフ場、スキ-場等の観光・スポ-ツ施設の造成に偏ったものがほとんど大部分を占めており、森林の公益的機能の多角的発揮に資するものは少なく、むしろ森林面積の減に結果するなど、公有林の公共的使命達成上多くの問題点を持つものであった。公有林の公共的使命である、森林資源の維持・造成、公益的機能の多角的発揮、公有林地元の地域振興への寄与、等などと整合性をもった多面的利用のあり方については、地元自治体の財政負担を含めた地元住民の意向の表明とそれらを取り入れた制度的仕組みの構築が重要な政策的課題となってきている。
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