1989 Fiscal Year Annual Research Report
担癌患者の末梢血に見いだされた血栓誘発因子の生化学的性質の解析と定量測定法の確立
Project/Area Number |
01570430
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢川 克郎 九州大学, 医学部, 講師 (90183665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 真一郎 九州大学, 医学部, 助手 (50211488)
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Keywords | 肺癌 / 血液凝固因子 / TIA |
Research Abstract |
肺癌患者120名の末梢血における血栓誘発因子(TIA)の有無を調べ臨床的検討を行った。TIAの陽性率はI期及びII期では10%以下であるのに対しIII期で42%IV期で48%と有意に上昇しておりTIAの出現は癌の進展と相関することがわかった。III及びIV期の患者を癌の組織別に分類しTIAの陽性率について調べた。扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌における陽性率は各々54%、44%、29%であり小細胞癌においては陽性率が若干低値であったが統計学的に各間において有意差は認められなかった。IV期の非手術症例で小細胞癌患者を除く32名の生存日数について検討した結果TIA陽性群は陰性群に較べその平均生存日数が有意に短かくこの結果よりTIAが予後因子の1つとなりうる可能性が示唆された。TIAの生化学的性質を調べた結果糖鎖を有するリポタンパクであり組織トロンボプラスチン類似の物質と考えられた。そこでTIAと組織トロンボプラスチンとの相異について検討した。トロンボプラスチンに対するモノクロ-ナル抗体及び特異的阻害剤であるカルフォビンディンのTIAに対する影響を調べたが両者ともTIA活性に対し何ら影響を及ぼさずこの結果よりTIAと組織トロンボプラスチンは別の分子であることが判明した。TIAの起源を調べるため種々の肺癌細胞樹立株に対するポリクロ-ナル抗体をモルモットに免疫し作成し同抗体のTIAに対する影響を調べた。肺癌細胞株5ヶの内3ヶの株に対する抗体がTIAに対し中和活性を示した。この結果より肺癌患者末梢血のTIAの癌細胞により産生されている可能性が示唆された。凝固活性化物質の多くは蛋白分解酵素としてその作用を発機することが知られている。そこで我々は種々の蛋白分解酵素阻害剤のTIAに対する影響を調べた。その結果TIAはセリンプロテア-ゼ阻害剤の一部によりその活性が失われることがわかりTIAはセリンプロテア-ゼであることが判明した。
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