1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01570753
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野口 孝 三重大学, 医学部, 助教授 (40144258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 一 三重大学, 医学部附属病院, 助手 (60174843)
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Keywords | 肝動脈・門脈同時遮断 / 下大静脈遮断 / フラッシュ液注入 / 送血ポンプ / 静脈・静脈バイパス / 肝組織血流量 / 過酸化脂質 / 肝障害 |
Research Abstract |
最近虚血による肝細胞障害の機序として再灌流後にみられる活性酸素や過酸化脂質を中心にしたfree radical chain reaction(reperfusion injury)に基づく病態が注目されているが、これまでは細胞レベルでの研究が主体であり、臨床的に重要なreperfusion injuryの限界や可逆性及びその対策について検討した報告は少ない。本研究は雑種成犬を用い、従来承認されてきた限界を超えて肝流入血行を遮断しさらに肝部下大静脈をも遮断して、肝のreperfusion injuryを検索するとともに各種薬剤を用いて虚血による肝細胞障害の可逆性と対策を明らかにすることを目的としており、初年度は以下の成績を得ることができた。尚、実験モデルとしては、肝動脈・門脈の同時遮断とともに、肝の上・下で下大静脈を遮断した。遮断時間は1、2、3時間とし、門脈及び下大静脈血を送血ポンプにより頚静脈へバイパスし、さらに肝側門脈本幹内に虚血肝フラッシュ用カテ-テル(I群:4℃乳酸リンゲル液、II群:4℃コリンズ液、III群:非注入)を挿入し、また肝部下大静脈内には排液用カテ-テルを挿入して検索した。 1.1週間以上生存率:送血ポンプを使用し、I群のリンゲル液やII群のコリンズ液の投与により、肝動脈・門脈及び下大静脈同時遮断を3時間行っても全例1週以上生存したが、非灌流群のIII群では1週生存率は50%未満であり、かつ2週以上生存したものは1例もなく、死因は全例肝不全であった。 2.reperfusion後の肝機能:各群とも遮断時間が長いと肝機能は不良であり、また同じ遮断時間でみてもIII群が最も不良であったが、I・II群間には有意差を認めなかった。肝組織中過酸化脂質量は高値を示したが生存例では2週で回復した。 3.reperfusion後の肝組織血流量:3時間遮断のI群、II群ともreperfusion後2時間目で血流量は低下しその後徐々に回復して4週で術前値となった。 最終年度は肝類洞壁細胞の微細構造や抗酸化剤の効果について検討する。
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[Publications] 野口孝: "肝移植" medicina. 24. 1632-1634 (1987)
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[Publications] 野口孝: "拡大肝切除とフリ-ラジカル" 肝胆膵. 16. 239-246 (1988)
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[Publications] 野口孝: "肝障害例における術後肝不全およびmultiple organ failureの病態と対策" 日消外会誌. 22. 1039-1042 (1989)
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[Publications] 野口孝: "脂質過酸化(free radical)と肝細胞障害" 肝胆膵. 19. 207-215 (1989)