1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01570819
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
新井 紀元 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (40103296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 邦彦 獨協医科大学, 医学部, 助手
永井 政勝 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50049136)
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Keywords | 悪性グリオ-マ / 遺伝子欠損 |
Research Abstract |
今回我々は、第10染色体上の多形性DNAマ-カ-(D10S17,D10S25,D10S26およびUK)をプロ-ブとして用いてグリオブラスト-マ7例、悪性アストロサイト-マ2例でサザン・ブロッティングを行った。〈結果〉グリオブラスト-マは7例中4例(57%)でヘテロ接合性の消失を認めた。悪性アストロサイト-マの2例ではヘテロ接合性の消失を認めなかった。グリオブラスト-マの症例のうち初発時には保たれていたヘテロ接合性が再手術時には消失した1例を経験した。これまでグリオブラスト-マの経過中にヘテロ接合性の消失を認めた症例の報告はなく、この第10染色体長腕の欠損がグリオブラスト-マの増殖に関与している可能性を示す貴重な症例と考えられた。〈症例〉5歳女児。複視、頭痛、嘔吐および左片麻痺で発症し、CTで右視床より側脳質に突出した腫瘍を認めた。そのため、腫瘍の部分摘出術を行った。組織学的所見は典型的なグリオブラスト-マであった。術後インタ-フェロン、ACNUおよび放射線照射を行ったが、残存腫瘍の縮小を認めず5ヶ月後に再度腫瘍摘出術を行った。組織所見は初発時と明らかな相違を認めなかった。〈考察〉グリオブラスト-マでは高頻度に第10染色体長腕の欠損が確認されている。臨床経過中に第10染色体長腕上の遺伝子の欠損を認めた1例は、同部位の遺伝子欠損がグリオブラスト-マの増殖に関与する可能性を示唆する症例と思われた。初発時より二回目の手術までの種々の補助療法が染色体の構造に変化を与え、ひいては腫瘍の発生、増殖、悪性度に影響をおよぼす可能性は存在する。例えば放射線誘発グリオ-マの報告もある。しかし、我々は本症例と同様の補助療法の前後で腫瘍組織を摘出し、同様の遺伝子解析を行いヘテロ接合性が保たれていたグリオブラスト-マの症例も経験しておりいちがいに論ずることはできない。今後多くの症例について遺伝子レベルでの解析および検討が必要であると思われる。
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