1989 Fiscal Year Annual Research Report
トロンボモジュリンの遺伝子解析とその産科領域における応用
Project/Area Number |
01570941
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中林 正雄 東京女子医科大学, 母子総合医療センター, 教授 (70114585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雨宮 照子 東京女子医科大学, 産婦人科, 助手 (00211011)
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Keywords | トロンボモジュリン / 早期発症型重症妊娠中毒症 / 遺伝子多型性 / プロテインC活性化能 / recombinant TM / Lineweaber burk plot |
Research Abstract |
〔目的〕血管内皮細胞膜表面および胎盤絨毛細胞に多量に存在し、トロンビンのリセプタ-として凝固抑制系の要であるトロンボモジュリン(TM)はその分子構造に多型性のあることが示唆されている。本研究では遺伝的な血管病変が示唆される早期発症型(早発型)重症妊娠中毒症のTMの塩基配列を解析し、遺伝子多型性の有無とその多型性による酵素的機能異常を検討した。 〔対象および方法〕 (1)高血圧家系をもつ早発型中毒症2例、正常妊婦2例の白血球より染色体のDNAを調整、制限酵素で消化後、DNA断片をファ-ジベクタ-に組み込んでTM遺伝子をクロ-ニングし、その塩基配列をジデオキシ法で解析した。 (2)TMの発現用プラスミドを動物細胞(COS-1)に導入してTMのrecombinationを行った。TMの酵素学的性状はproteinc-MCA基質法を用いTM、プロテインC、トロンビン変化によるLineweaber burk plotよりTMのKm、Vmaxを分析した。 〔成績および結論〕 (1)塩基配列の解析よりTMにはN末端より455番目(EGF様ドメイン上)がAlanineであるAla型と、ValineであるVal型が存在することが明らかとなった。今回分析した正常妊婦はAla型であり、早発型中毒症はVal型であった。 (2)両者のrecombinantTMのプロテインC活性化能はKm、Vmaxともに同値を示し、TMの機能異常はin vitroでは認められなかった。 〔考察〕TMにはAla型とVaI型が存在することが明らかとなったが、今後早発型中毒症および正常人の多数例の検体についてTMの遺伝子多型性を分析し、臨床的血管病変との関連性を解析する必要があると考えられた。
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[Publications] 中林正雄: "凝固線溶系からみた妊娠中毒症の発症病態" 日産婦雑誌. 40. 1000-1009 (1988)
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[Publications] 中林正雄,武田佳彦,坂元正一: "妊娠中毒症と血液凝固線溶系" ペリネイタルケア. 7. 33-38 (1988)
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[Publications] M.Muraoka,M.Nakabayashi: "Evaluation of toxemia of pregnancy by venous occlusion test" Current Prospects. 147-150 (1988)
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[Publications] 中林正雄,矢谷達樹,村岡光恵,雨宮照子,武田佳彦,坂元正一: "凝固線溶系からみた妊娠中毒症の病態と治療" 産婦人科治療. 58. 348-352 (1989)
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[Publications] S.Kawahara,K.Gomi,S.Yamamoto,M.Nakabayashi: "The Ala455 and Val455 Alleles of Human Thrombomodulin Are Both Normal Genes" Thrombosis Hemostaisis.
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[Publications] 中林正雄,村岡光恵,東舘紀子,武田佳彦,坂元正一: "妊娠時の血圧調節機構と病態生理(編者:友田豊,佐藤和雄)" メディカルトリビュ-ン, 182 (1989)