1991 Fiscal Year Annual Research Report
抗原虫剤(酒石酸アンチモニ-ルナトリウム)の聴覚障害についての研究
Project/Area Number |
01570949
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Research Institution | Yamanashi Medical college |
Principal Investigator |
今村 まゆみ 山梨医科大学, 医学部, 助手 (00203331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 俊一 山梨医科大学, 医学部, 助手 (20232613)
荻野 純 山梨医科大学, 医学部, 助手 (00177156)
野沢 出 山梨医科大学, 医学部, 講師 (40172788)
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Keywords | スチブナ-ル / 聴覚障害 / 聴性脳幹反応 / 形態学的観察 |
Research Abstract |
酒石酸アンチモニ-ナトリウム(以下、スチブナ-ルと略す)をモルモットに投与し、その副作用としての聴覚障害に関して、実験的に聴性脳幹誘発反応(以下、ABRと略す)と形態学的観察を施行し検討した。 プライエル反射正常の白色ハ-トレ-系モルモット(体重350〜450g)に、日本電気三栄社製のシグナルプロセッサ7S11Aにて、スチブナ-ルを投与前と投与後にABRを測定した。続いて、スチブナ-ルの投与方法として、静脈内、腹腔内、中耳骨胞内の3種類とした。静脈内へ5ml/kg投与した群においては、3時間の観察では、はっきりとした変化を認めなかった。腹腔内へ5ml/kg連日20回投与した群では、5匹中1匹で約40dBの域値上昇、10ml/kg連日20回投与した群では、5匹中2匹で約30dBの域値上昇、10ml/kg隔日20回投与した群では、5匹中1匹で約30dBの域値上昇、中耳骨胞内へ投与した群では、5匹中1匹で約10dBの域値上昇を認めた。 形態学的観察では、中耳骨胞内投与においては中耳の広範な炎症所見、骨新生がみられ、これに伴う内耳炎の結果と思われ基底回転の炎症所見のある個体が存在した。これとは別に、頂回転、第3回転の中央階に、細胞成分のないエオシン好性の析出物の貯留を認めた。コルチ器及び血管条については明かな左右差を認めなかった。腹腔内投与群では、個体差はみられたが、中央階への細胞成分のないエオシン好性の析出物の貯留を認めた。スチブナ-ルの投与量、投与方法とは明かな相関を認めることはできなかったが、ABR域値の上昇した個体に強く現れる傾向がみられるようであった。 以上より、スチブナ-ルがいかなる機序にて内耳へこのような変化をもたらしたのか、また、これが明かな病的所見かどうかは、現段階では確定困難であるが、スチブナ-ルの投与により、何らかの聴覚障害が、一過性もしくは、永続的におこる可能性があることが示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 今村 まゆみ,野沢 出: "聴性脳幹反応検査の臨床的研究" 山梨医大誌. 5. 201-208 (1990)
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[Publications] 今村 まゆみ,野沢 出: "ミトコンドリア脳筋症における聴力障害について" 臨床耳科. 17. 269 (1990)
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[Publications] 今村 まゆみ,野沢 出: "ミトコンドリア脳筋症における聴力障害について" 耳鼻咽喉科臨床. (1991)
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[Publications] 今村 まゆみ,野沢 出: "Kokayne症候群における聴力障害について" 耳鼻咽喉科臨床. (1991)
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[Publications] 今村 俊一,今村 まゆみ: "びまん性転移性骨髄膜腫症の側頭骨病理所見" 耳鼻咽喉科臨床. 83. 855-861 (1990)
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[Publications] 野沢 出,今村 まゆみ: "モルモットにおける聴性脳幹電気反応(ABR)の検討" 山梨医大誌. (1991)
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[Publications] 今村 俊一,村上 嘉彦: "2次性側頭骨悪性腫瘍とその側頭骨病理" 日耳鼻会報. 94. 924-937 (1991)
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[Publications] 今村 俊一,野沢 出: "多彩な脳神経症状を呈した側頭骨軟骨肉瘍症例" 臨床耳科. 17. 80-86 (1990)