Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲田 清一 関西大学, 文学部, 教授 (50121900)
安彦 一恵 滋賀大学, 教育学部, 教授 (20135461)
川本 隆史 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (40137758)
佐藤 康邦 東洋大学, 文学部, 教授 (80012508)
大庭 健 専修大学, 文学部, 教授 (00129917)
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Research Abstract |
本研究は,「人はどうして道徳的でなければならないのか」(Why be moral?)という現代倫理学にとって最も根本的な問いを,出来る限り多様な局面から具体的に定式化し,解答の方向を定めることを目標とするが,そのうちには同時に,従来交流の乏しかった関東と関西の中堅研究者間の交流とそれに伴う研究の活性化も課題として含まれている。こうした目標と課題の下で,本年度は4度の全体会議と,関東関西それぞれのブロックで数度に亘る個別の研究会が催され,可能な限り多くの研究協力者をも交えて,申請書に挙げられた5つの論題すべてに亘る意見,情報交換および討議がなされた。そのうち特に全体会議で取り挙げられた論題は,自己と他者,平等の正当化,「べき」の生成論,人格論,技術の問題,芸術と倫理,正義論等であり,法学者,美学者等の参加も願って綿密な論議がなされたが,さしあたり初年度としては,問題状況に対する精密な共通理解の形成および従来の見解に対する批判が課題とされ,ほぼ当初の目的は達成されたと考えられる。得られた知見としては,“Why be moral?"の問いが,道徳性についての他者への説得とコミュニケ-ションの可能性を合理的な言語分析的手法によって確立することをめざす問いであると共に,また現代の社会状況との連関への眼差しを強く要求する問いであることも,様々な道徳的判断や亊例に即して明確になってきた点を挙げれよう。しかしまた,分析的哲学的観点からは異質にみえる超越論的設定に基づく問題把握の可能性も,同時に看過できない課題として反省を迫ってきている点も挙げておかねばならない。こうした異質にみえる立場が,相互の交流と討議を通して,問題把握の地平の拡大を形成していくことが次の課題であり,またそこに立場,研究手法,地域等の点で相異なる研究者間の交流をめざす本研究の意義も存していると思われる。
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