1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02401008
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森 正夫 名古屋大学, 文学部, 教授 (00036641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 裕司 名古屋大学, 文学部, 助手 (10242794)
加藤 久美子 名古屋大学, 文学部, 講師 (80252203)
黒田 明伸 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (70186542)
重松 伸司 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (20109242)
石原 潤 名古屋大学, 文学部, 教授 (70080265)
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Keywords | 地域社会 / 江南デルタ / 地域認識 / 地方志 / 集権的国家権力 / 固有の「場」 / 海域世界 / 比較史 |
Research Abstract |
本年度も、旧中国の地域社会の特質について、初年度以来設定・継承されてきた研究視角-(1)地方志を活用しながらの中国の各時代・地域の個別事象の分析、(2)近代における中国とインド村落・マレーシア移民社会との比較-から、研究代表者・分担者各自による研究をすすめた。とりわけ、本年度は4年間にわたった本研究の最終年度として、昨年度実施した拡大研究会で獲得された基本的視座に基づきながら、各自の分担領域のまとめとしての研究活動を実施した。中国明清史では、史料的にも貴重な15世紀江南デルタにおける救荒倉庫の運用規定の分析を通して集権的国家権力とそれの基礎を成しつつも固有の「場」としての性格をもつ地域社会との緊張関係を探った。近代史では、江浙地域の蚕糸業にたいするマスコミの論説という、いわば「地域認識」の在り方という観点から考察が実施され、中国清代を中心に銀銭二貨制という独特の貨幣経済システムを「市場経済」にとどまらず地域で展開する貨幣動向と近代世界経済とを架橋する業績も生まれた。また地理学の視点からは、主に自由市場における商業活動の特質に関する検討が行なわれた。南・東南アジアでも村落レヴェルの政治権力の発現の有様や更に広大な海域世界の中での地域の位置付けが検討され、旧中国の地域社会を比較史的に把握することができた。さらに、今年度は本研究のメンバーによって、国内外の学会での報告あるいは報告批判という形で、中国近世史・東南アジア史の学界状況に対するコメント的発言が見られたが、これらにも研究統括の段階を迎えた本研究によって獲得された理論枠組が生かされた。総じて、本年度は昨年度までで見出された問題意識や実証の方向性に基づいた包括的な実証研究やフレームワークに属する活動が実施され、最終年度たるにふさわしい実績と成果を見ることができた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 森 正夫: "15世紀江南デルタの済農倉をめぐる資料について" 名古屋大学文学部研究論集. 119. 1-24 (1994)
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[Publications] 石原 潤: "『中国集市大観』に見る中国の自由市場" 名古屋大学文学部研究論集. 119. 65-96 (1994)
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[Publications] 鈴木智夫: "19世紀70・80年代における『中報』の江浙蚕糸業建案について" 小島淑男編『近代中国の経済と社会』汲古書院. 35-48 (1993)
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[Publications] 重松伸司: "ベンガル湾という世界" 溝口雄三編『地域システム』東京大学出版会. 51-85 (1993)
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[Publications] 加藤久美子: "ムァン権力の水利組織への関与をめぐって" 名古屋大学東洋史研究報告. 18. 133-157 (1994)
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[Publications] 加藤久美子: "Muang Polities in Sipsongpanna" 名古屋大学文学部研究論集. 119. 57-64 (1994)
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[Publications] 黒田明伸: "中華帝国の構造と世界経済" 名古屋大学出版会, 337 (1994)
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[Publications] 重松伸司: "マドラス物語" 中央公論社, 222 (1993)