1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02451005
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY, FACULTY OF ART AND LETTERS |
Principal Investigator |
田中 英道 東北大学, 文学部, 教授 (80000397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 亨 東北大学, 文学部, 助手 (60232188)
森 雅彦 宮城学院女子大学, 助教授 (90137612)
松本 宣郎 東北大学, 文学部, 教授 (60011368)
吉田 忠 東北大学, 文学部, 教授 (60004058)
鈴木 善三 東北大学, 文学部, 教授 (70004033)
岩田 靖夫 東北大学, 文学部, 教授 (30000574)
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Keywords | 天体表現(星座) / 占星術 / 地動説・天動説 / 『創世紀』 / フィチ-ノ / ネオ・プラトニスム / コペルニクス / ガリレオ |
Research Abstract |
本年は計画どおり「近代」の天体像が形成される前後の16、17世紀の問題を中心に研究を行なってきた。このガリレオの地動説を生み出した時代は「近代」と「中世」のせめぎ合い現象がみられそれが芸術や思想に与えた影響は大きい。ひとつはキリスト教の聖典『創世記』に基づく天体観が根強く存在し「神」によって創造されたという認識が古代からの宇宙観、またコペルニクスやガリレオの新しい宇宙観の勃興とはげしくぶつかりあった。この新しい宇宙観といっても、古代からの天文学と連続する面がありその点を説明すべきであろう。古代の宇宙体系は第一の体系はアリストテレスに代表されるもので、一連の同心天球を用いて星の日周運動や太陽、月、惑星の運動を説明した。しかし見かけの大きさや明るさが時折変化することから見て周期的に地球からの距離が変化することが説明できなかった。しかしこの観念が「中世」において流布し12、13世紀の図像体系にも「神」がこのような形の天体を創造している姿が描かれている(ヴェネツィア、サン・マルコ寺院のフレスコ画など)。他方第二の体系はプトレマイオスの数学的体系で、観察事実をより詳細に説明するためにさまざまな円を付加し説明しようとした。この体系こそ新しい地動説を生み出す基盤となったもので、17世紀までの大部分の天文学者の支持を受けていたのである。この体系が当時「占星術」の問題と絡み合い芸術においてはひとつの混乱を招いた。フィチ-ノのプラトニスムによる宇宙観はキリスト教的な天動説約な体系をもちそこに「神」に近い「知性」から遠い「物質」にいたるハイラルキ-をつくり上げたが、それが16世紀半ばにおいて急激な打撃を受けそのネオ・プラトニスム思想が色褪せていった。これらの問題を科学史、思想史の見地から研究が行なわれ、それに対応する歴史、とくに美術史・文学史の見地からの表現例を検討し、その芸術学的な思想の抽出を行なった。
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[Publications] 田中 英道: "ミケランジェロ作システィナ礼拝堂天井壁画の図像プログラムー『黄金伝説』序章とエジエイオの講話の重要性ヴァチカン・システィナ礼拝堂調査報告第1回" 美術史学. 8. 113-136 (1986)
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[Publications] 田中 英道: "ヴァチカン・システィナ礼拝堂調査報告第7回" 美術史学. 14. (1992)
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[Publications] 森 雅彦: "天蓄・星座 宇宙 プラネタリウム絵画とルネサンスの想像力" SPAZIO. 40. 42-56 (1989)
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[Publications] 田中 英道: "『レオナルド・ダヴィンチ』" 講談社, 426 (1992)
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[Publications] 田中 英道: "『イタリア美術史』" 岩崎美術社, 650 (1990)