1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02451079
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 和男 東京大学, 経済学部, 助教授 (90151787)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 洋 東京大学, 経済学部, 助教授 (30158414)
|
Keywords | 株式持合 / 株価収益率 / 金融行政 |
Research Abstract |
本年度は企業間の株式持合、ないしそれを含む広い意味での日本の金融構造の資産価格への影響,企業投資行動への影響,金融政策への影響について分析を進めた。 株価に対する株式持合の影響については、次のような結論が得られた。株式持合の株価水準への影響は、持合を進めるための資金がどのようにして調達されるかに依存する。借入れによる場合は株価は影響をうけないが、配当を減らして株式購入に当てた場合は株価は上昇する。いずれの場合も株価収益率(株価/企業収益)への影響は同じである。配当性向が100%以下である限り、株価収益率は持合によって上昇する。 国際的にみて極めて高い日本の株価収益率(1989年で約60倍)は、このような持合の影響を除去すると、かなり低くなる。(1989年では約40倍。)従って、持合が株価収益率を大幅に高めているのは事実だが、それのみでは、日本の株価収益率の高さは説明できない(89年の世界平均は15〜20倍)。 持合を含む日本的な金融構造と金融行政の効率性との関係についても分析した。日本では金融機関を中心に企業が系列化されているため、その中での情報の流れが円滑である。この構造を利用して、行政当局は公的介入に必要な情報を素早く収集できる。このことが、日本の金融行政のパフォ-マンスの高さ(市場メカニズムの効率性を損なわずに、金融業の安定性を確保してきたこと)につながった可能性が高いとの結論が得られた。 以上のような金融構造と企業投資行動との関係,また為替レ-ト決定を含む日本経済の国際的側面との関係についても分析を始めたところである。
|
-
[Publications] 植田 和男: "Are Japanese Stock Prices Too High?" Journal of the Japanese and International Economies.4. 351-370 (1990)
-
[Publications] 植田 和男: "日本型規制の“功罪"ー金融業" 『日本の政治経済システム』シリ-ズ現代経済研究. 1. 25-49 (1990)
-
[Publications] 吉川 洋: "On the Equilibrium YenーDollar Rate" American Economic Review. 80. 576-583 (1990)