1991 Fiscal Year Annual Research Report
中国近代化の過程における西欧科学技術導入についての基礎研究
Project/Area Number |
02452286
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
橋本 敬造 関西大学, 社会学部, 教授 (40067666)
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Keywords | ジョン=フライヤ- / 江南製造局繙訳館 / 事業記 / 科学技術書 / 口述 / 筆受 / 曽国藩 / 李鴻章 |
Research Abstract |
本研究課題による研究の第2年次にあたる本年度は,第1年次において収集した資料について検討・分析するとともに,本研究課題のなかでとりわけ重要な意味をもつことが判明したジョン・フライヤ-の江南製造局繙訳館における翻訳事業を解説した文章,すなわち「江南製造局翻訳事業記」(1880)についての研究を実施し,その邦訳・訳注作業を開始した。1868年,上海においてこの翻訳事業が公式的に開始されて以来,8名以上のイギリスやアメリカの宣教師達と30名以上の中国人によって科学技術書を中心とした98部(235冊)の西欧の書籍が口述,筆受という方法で訳出され刊行された。その一部は日本にももたらされたことは本年度の調査によって判明したところである。 この翻訳事業には清朝の高官であった曽国藩や李鴻章らが直接・間接的に関与し,その進行に強い関心を示した。しかし,最終的には,中国近代化のために必ずしも所期の目的が達せられたといえなかったのはなぜか,という問題にイギリス人であった当事者のこの解説書が最も有効に答えるものであるということがわかった。これについてはすでにアメリカのA・ベネットの研究があるが,日本ではその位置付けがなされていたとはいえないので,この訳注のプレリミナリ-な成果を第2年次の終了とともに公表することができた。 当時の科学技術は西欧においても急速な発展をとげていたが,この事業開始当初の中国において目標とされていたレベルを短期間のうちに上回っていくという結果になり,翻訳事業の対象とする文献について,当初の大英百科全書的な叢書からもっと専門的,個別的なものを翻訳刊行する必要に迫られたという事情についての理解もこの「事業記」の分析作業を進めた結果として明白になった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 橋本 敬造: "ジョン=フライヤ-『江南製造局翻記事業記』訳注" 関西大学『社会学部紀要』. 23ー2. 1-29 (1992)
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[Publications] KEIZO HASHIMOTO: "Review:Scientific Revolution in the Context of Astronomical Transformation" Historia Scientiarum. 1-2. 163-166 (1991)
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[Publications] 橋本 敬造: "フランスの教育制度と問題点(C・Jami,訳)(関連論文)" 関西大学『教職課程研究センタ-年報』. 6. 19-35 (1992)
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[Publications] 橋本 敬造: "一般教育としての科学史(連関論文)" 関西大学『一般教育研究センタ-報』. 16. 1-5 (1992)
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[Publications] 橋本 敬造: "「見界総星圏」と『恒星総圏』" 京都大学人文科学研究所研究報告『中国古代科学史論続篇』. 333-366 (1991)
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[Publications] 橋本 敬造(編著): "生命現象を考える(関連図書)" 京都玄文社, 230 (1992)