1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 久雄 東京大学, 教養学部, 教授 (50157682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 学 東京大学, 教養学部, 助手 (80231843)
安部 素子 東京外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師
本村 凌二 東京大学, 教養学部, 助教授 (40147880)
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Keywords | 女性 / 結婚 / 出産 / 姦通 / 淫行 / 聖母 / 女弟子 / フェミニズム |
Research Abstract |
今年は二年継続で行われた本研究の最終年度にあたり、研究報告書の形でこの研究の成果を問うこととなった。報告書の中でその成果を発表したのは、今年度研究分担者の安部、本村、秋山の三名である。 まず「古代ギリシアにおける女性」と題する分野で研究をすすめた安部は「正義とパンド-ラ-」との題で論文を掲載した。これは古代ギリシアの叙事詩人・神話体系家であるヘ-シオドスにおける女性理解を探ろうとするものである。安部によれば、古代から「女性嫌悪者」として悪名高いヘ-シオドス像は、主として後世の歴史伝承に由来するものであり、この点でヘ-シオドス像は変貌しうる。 次に「古代ロ-マの政治史・一般史における女性」という分野を担当した本村は「結婚と女性の地位」との題で論文を執筆した。これはラテン語における〈姦通〉と〈淫行〉という語彙の差異に着眼し、ロ-マの結婚観が家名重視から男女の正当な結びつきを重んずるものへと変貌を遂げていった過程を明らかにするものである。 そして「ギリシア語教会文献における女性」と題して研究をすすめた秋山は「『ヨハネ福音書』における女性の役割と意義」との小論を記した。これは『ヨハネ福音書』において、女性たちが特にキリストを「言葉」として確立する上で決定的な役割を果たしたということを明確にするものである。 最後に宮本は、報告書にはその研究成果に代えて「序文」を記した。彼は本研究を通じてその代表者としての立場から、各分担者に対し「女性」というものを文献の上で捉えるだけでなく、現実の女性にいかに接すべきかという哲学的な視座からの提言を与えてきた。その実りは上記三名の研究成果に顕れていることが期待される。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 安部 素子: "「正義」とパンド-ラ-ーヘ-シオドス『仕事と日々』と女性嫌悪ー" 古代地中海世界における「女性」の役割と意義. 1-23 (1992)
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[Publications] 本村 凌二: "「結婚」と女性の地位ー「姦通」をめぐる意識の変化ー" 古代地中海世界における「女性」の役割と意義. 25-29 (1992)
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[Publications] 秋山 学: "『ヨハネ福音書』における女性の役割と意義ーことばの誕生と成立をめぐってー" 古代地中海世界における「女性」の役割と意義. 37-48 (1992)