Research Abstract |
キボシカミキリの地理的変異を生理的な面より検討するため,エステラ-ゼザイモグラムについて研究を行った. 成虫は西日本型として鳥取,島根,徳島,愛媛,東日本型として福島,宇都宮の各地から採集してもらい,桑の枝条に産卵させた。ふ化幼虫は桑葉を用いて飼育した。電気泳動はアガロ-スゲル(0.7%)を用いて行い,エステラ-ゼは基質としてPーナフチル酢酸を用いて検出した。 その結果、エステラ-ゼザイモグラムはふ化幼虫において,原点から陽極側へ移動するバンドが多く検出され,最も変異のみられるのは原点から中位までのバンドであった。そこで,それらのバンドを原点よりA,B,C,Dとし,その数や移動度の違いなどから16の泳動パタ-ンに分け,パタ-ンの出現割合や各バンドの発現頻度から地域差を検討した。Aバンドについては,活性の強いもの,弱いもの,そしてないものがあり,それらの発現割合はペアによって異った。そして,活性の強いものは東日本地域に多く約半数で認められ,西日本地域のものはほとんど活性のないものであった。しかし,鳥取の一つのペアで活性のあるものがあった。また,活性の弱いものは全地域でわずかにみられる程度であった。B,C,Dバンドでは,パタ-ンはペアによる変異も大きく地域差を見出すことはできなかった。 さらに,幼虫を組織に分けてエステラ-ゼを調べた結果,体液では発育に伴って陽極側のバンドの他に陰極側へ移動するバンドがみられるようになった。そして,Aバンドは消化管において活性が強く,脂肪体でも若干あらわれた。B,Dバンドは脂肪体で活性が強く,消化管では弱くあらわれた。 以上の結果,地理的変異はAバンドの発現において認められた。そして,Aバンドは幼虫組織の消化管で活性が強いことが明らかとなった。
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