1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高月 昭 東京大学, 農学部, 助教授 (80011972)
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Keywords | 糖蛋白質 / 細胞内転送 / 阻害剤 |
Research Abstract |
現在取得している糖蛋白質細胞内転送阻害剤のうち、物理化学的性質の似ているS6791物質とS68物質について、その構造を同定すると共に、糖蛋白質細胞内転送における標的細胞内器官を決定することができた。各種機器分析の結果から、両物質共に18員環構造を主骨格とするマクロライド系の抗生物質であることが判明し、S6791物質はフォリマイシンと、S68物質はSS33410と同定された。SS33410は抗炎症剤として単離された抗生物質であるが、その抗炎症作用は糖蛋白質の細胞内転送阻害で説明できる。細胞内転送阻害物質の検索を始めるにあたって期待していたことではあるが、これら阻害剤の抗炎症剤としての応用の可能性を示す結果であるといえよう。これら阻害剤存在下では、水疱性口内炎ウイルス(VSV)外被糖蛋白質(G蛋白質)はウイルス粒子中に取り込まれて培地中に放出されることはなく、細胞内に糖鎖不全の低分子の状態で蓄積される。糖蛋白質は細胞内を転送される過程で、部位特異な糖鎖のプロセシングを受ける。即ち、糖鎖構造から蓄積されている部位を推定することが可能である。そこで、阻害剤存在下に細胞内に蓄積されるG蛋白質を[ ^3H]マンノ-スで標識し、グリコペプチドを調製した。初ずαーマンノシダ-ゼで処理し、次いでNーアセチルヘキソサミニダ-ゼ処理、更に、αーマンノシダ-ゼ処理を行ない、各処理の後にバイオゲルP4カラムクロマトを行なって溶出パタ-ンの変化を比較した。その結果、(GIcNAc)_2(Man)_5GlcNAcの糖鎖構造を有することが示され、ゴルジ器官メディアル部位で細胞内転送が阻害されることが強く示唆された。上皮細胞において基底膜面で成熟するVSVのみならず、内腔面で成熟するインフルエンザウイルスの増殖を阻害することから、両極への細胞内転送は阻害部位以降の過程で分れることが示された。
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