1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660331
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Research Institution | University of Osaka Prefecture, College of Agriculture |
Principal Investigator |
西村 昌数 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (50011995)
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Keywords | 発生毒性 / パラチオン / 生体機能試験 / 神経伝達物質放出能 |
Research Abstract |
前年度の試験で農薬パラチオン(PRT)が非刺激下の運動神経伝達物質の放出能(微小終板電位の頻度)を選択的に抑制する対見を得、その作用は伝達物質の分解を慢性的に抑制することに起因すると考察した。これはPRTの慢性投与が伝達物質放出能の変化を残したことを意味している。PRTは脂溶性物質であり、その胎盤通過が予測される。胎生期でも頻度は低いが微小終板電位が測定される。胎生期でも生じる伝達物質放出能はシナプスの初期結合、その分化、神経の支配様式およびシナプス後要素の分化などに影響すると考えられている。したがって、胎児に移行したPRTが伝達物質放出能を抑制すると神経筋系に機能異常が生じる可能性がある。平成3年度ではその可能性を中心に調べた。妊娠0日より分娩に至るまでPRT(2.57μmoles/kg/day)を母マウスの腹腔内に連日投与し、その産仔の成熟中および成熟後において各種試験を行った。その結果、いずれの時期においても、オ-プンフィ-ルド法による行動観察、認知力試験、運動性、中枢興奮性、運動協調性、筋緊張度、反射、自律神経性反応、視覚検査、平衡感覚、筋力試験、情動性試験、攻撃性および急性死亡などの生体機能試験、ならびに運動神経伝達物質の素量性放出能試験において、有意差を示す影響は測定できなかった。このことは、本実験で用いた母マウスへの投与量に限定して論じる限り、胎児期にPRTがその体内に移行し成熟例と同様の伝達物質放出抑制作用を発揮したと仮定しても、その影響が生後の神経分化過程や成熟後の神経機能に測定し得るだけの異常を残す可能性は乏しいことを示している。
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