1991 Fiscal Year Annual Research Report
網膜芽細胞腫における癌抑制遺伝子の発現とEIA蛋白ーウィルス発癌モデルを用いた分子病理学的研究ー
Project/Area Number |
02670147
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
小林 槙雄 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80060086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢田 達男 日本大学, 医学部, 助教授 (90162544)
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Keywords | 網膜芽細胞腫 / アデノウイルス12型 / DNA解析 / Rb遺伝子 / サザンブロット法 / in situハイブリダイゼ-ション / Rhodopsin |
Research Abstract |
ヒトアデノウイルス12型TW株(東京大学医科学研究所癌ウイルス研究部白木和子博士の恵与)感染力価108PFUの濃縮液0.005mlを硝子毛細管を用いて、CDF系ラット硝子体腔内に接種して経過観察したところ1/22(4.5%)に網膜腫瘍を誘発できた。期間は118日であった。本年度の研究計画は、この腫瘍組織と培養細胞系について1)腫瘍組織におけるE1A領域DNAの発現の有無、2)経時的にDNA発現を観察して初期変化の把握、3)細胞増殖と癌遺伝子の関連性、4)腫瘍細胞の視細胞分化を検討する。[結果]1)腫瘍組織及び対照ラット網膜組織より抽出したgenomic DNAを用いてサザンブロット法で検索すると、アデノウイルス12型E1A領域のフォトビオチン標識プロ-ブでは、腫瘍組織より抽出されたサンプルにおいてバンドが同定でき、発癌遺伝子の組み込みが確認できた。用いた制限酵素をEco R1とし、ヒトRb遺伝子(H3ー8)cDNAをプロ-ブとしてサザンブロット法を行なうと、腫瘍組織、対照ともにバンドが同定できた。即ち、発癌過程でのヒト及びラットに共通した遺伝子異常が示唆される。そこで、ヒト網膜芽細胞腫における遺伝子異常を確認するために、パラフィン包埋組織からDNAを抽出してPolymerase Chain Reaction(PCR)法にて検討した。対照してヒトプレアルブミン遺伝子のエクソン3と、RB遺伝子のエクソン4,20についてみるとエクソン20の位置で一例に欠損が示された。2)接種1週、2週後の網膜組織からのDNAの発現をみると1週後の網膜内顆粒層において既にadenovirus12ーElA mRNAの発現が確認できた。RB gene productに対する抗体(oncogene science Co.)は、基礎的検討の過程で、特異性に問題が多く、その対比検討に至らなかった。3)培養細胞系を用いて、PCNAとRB gene productに対する抗体での反応を試みたが、結論を得られなかった。4)培養細胞系を用いて、分化誘導後に抗Rhodopsin抗体による酵素抗体法で免疫染色してみると、少数の神経突起様の細胞形態に陽性像が確認された。
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[Publications] 小林 槙雄,澤田 達男,加藤 陽一郎,川生 明: "アデノウイルス12型誘発ラット網膜腫瘍におけるDNA解析" 日本病理学会会誌. 80. 221 (1991)
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[Publications] Y.Kato,H.Matsumoto,M.Kobayashi,Y.Okada,A.Kawaoi: "Genomic DNA Analysis of Rat Retinal Tumor Induced by Adenovirus Type 12" ACTA PATHOLOGICA JAPONICA. 41. 811-817 (1991)
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[Publications] 加藤 陽一郎,岡田 芳家,川生 明,小林 槙雄: "網膜芽細胞腫のパラフィン包埋組織を用いたDNA解析" 東京女子医科大学雑誌. 62. 107-111 (1992)