1992 Fiscal Year Annual Research Report
網膜芽細胞腫における癌抑制遺伝子の発現とEIA蛋白-ウィルス発癌モデルを用いた分子病理学的研究-
Project/Area Number |
02670147
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Research Institution | Tokyo Women's Medical College |
Principal Investigator |
小林 槙雄 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80060086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢田 達男 日本大学, 医学部, 助教授 (90162544)
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Keywords | 網膜芽細胞腫 / アデノウイルス12型 / DNA解析 / RB遺伝子 / EIA蛋白 / サザンブロット法 / in situ hybridization |
Research Abstract |
今年度は、研究の総括とPCNAを用いた細胞増殖とオソコジン(N-myc)の腫瘍組織内同定に関して研究した。 [材料と方法]ラット新生仔硝子体腔内に10^8PFU(感染力価)のヒトアデノウイルス12型TW株の濃縮液0.005mlを接種し、3時間後より経時的に眼球を摘出した。接種後、3,6,12,24,36,63時間ごとに網膜組織を4%PFAで固定後、3μのパラフィン包埋切片を作成し、ElA領域DNA遺伝子とヒトN-mycDNAをビオキン化プローブとして小路らの方法に従いブロテアーゼ前処理後、湿箱中で反応するin situ hybridizationにより発現を観察、同時に抗p53モノクローナリ抗体と抗PCNAモノクローナル抗体を用い(酵素抗体法)ABC法で免疫染色をした。 [結果と考察]アデノウイルスEIA遺伝子のmRNAはウイルス接種後3時間から腫瘍細胞に確認することができ、その後持続的に発現していた。N-myc遺伝子のmRNAは、6時間後より反応は弱いが発現していた。免疫染色においては、p53の発現は全てにおいて陰性であったが、PCNAの標識率は63時間の組織では急激に増加した。前年度までに、腫瘍組織より抽出したgenomic DNAを用い、サザンブロット法で検索した結果、担癌動物にのみ発癌遺伝子の組込みが確認され、また制限酵素(EcoRI)で切断したDNA断片についてH3-8cDNAプローブでサザンブロット法を行うと腫瘍組織、対照ともにバンドが同定でき、ヒト及びラットに共通した遺伝子異常が示唆されている。このウイルス誘発実験系では、かなり早期からウイルス初期遺伝子の発現があり、その後に誘導される癌関連遺伝子N-mycの発現が腫瘍化に重要な役割を担うことが示唆された。また、本研究の結果からは癌抑制遺伝子p53は腫瘍発生は直接関与していないものと考えられた。最近、ラットRb遺伝子が単離されたので、本実験系を用い、発癌過程における遺伝子異常を明らかにすることが必要と考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Sawada, M.Niihashi I. Sakurai: "An immunohistochemical stydy of neovasculature in human brain tumors." Acta Pathol Jpn.38. 713-721 (1988)
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[Publications] M.Afreen, K.Asayama, N.Uchida, K.Dobashi, H.Hayashibe, M.Kobayashi K. Suzuki, A.Kawaoi: "Immunohistochemical localization of copper zinc and manganese superoxide dismutases in human tissues." Yamanashi Medical J.5. 181-188 (1990)
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[Publications] Y.Katoh, H.Matshmoto, M.Kobayashi, A.Kawaoi: "Genomic DNA analysis of rat retinal tumor induced by adenovirus type 12" Acta Pahol. Jpn.41. 811-817 (1991)
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[Publications] K.Suzuki, H.Matsumoto, M.Kobayashi A.Kawaoi, K.Asayama, S.Moriyama: "Immunohistochemical localization of copper zine and manganese superoxide dismutase in diisopropanolnitrosamin-induced rat thyroid lesions" Acta Histochem, Cytochem. 24. 69-75 (1991)
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[Publications] 加藤 陽一郎, 小林 槙雄, 岡田 芳家, 川生 明: "網膜芽細胞腫のパラフィン包埋組織を用いたDNA解析" 東女医大誌. 62. 107-111 (1992)
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[Publications] T.Sawada, Y.Kusumi, M.Niihashi, I.Sakurai: "A Kinetic stdy of the neovascularization in subcutaneous tumors of rats with cultured cell transplants from MNU-induced gliosarcoma and adenovirus 12-induced retinal tumor" Neuropathol. 12. 39-46 (1992)