1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02670892
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
磯野 信策 新潟大学, 歯学部附属病院, 助手 (10168289)
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Keywords | 口蓋裂乳児 / 叫喚音声 / Nasometer / 鼻腔共鳴 / nasalance / 聴取識別実験 / Hotz床 |
Research Abstract |
唇顎口蓋裂児の乳児期の叫喚音声の音響特性と鼻腔共鳴量、及びそれらの発達的変化を調査した。また、それに先立って、KAY社製Nasometerの有効性について予備的に調査した。 <方法>1.予備的調査は3歳から7歳までの口蓋裂児30例から得た5母音をNasometerを使用してnasalanceを計測し、3名の言語治療士による聴覚判定と比較した。2.生後1カ月以内にHotz床を装着した口唇、口蓋ともに未手術の片側唇顎口蓋裂乳児3例(男2例、女1例)と片側唇顎裂男児1例を対象とした。生後0カ月から6カ月まで毎月1回叫喚音声を録音して、1)同一月齢の唇顎口蓋裂児のHotz床装着時と撤去時および片側唇顎裂児の3種の音声をランダムに配置したサンプルテ-プを3名の言語治療士に提示して、3種の何れの音声であるかを識別させた。2)ソナグラフを用いて音響学的分析を行った。3)音声の採集時にNasometerを用いてnasalanceを測定した。<結果と考察>1.nasalanceと聴覚判定とは相関がみられ、さにら聴覚的判定でとらえられない僅少の差を測定する事ができた。2.1)聴取識別実験では3カ月までは正答率は低かったが、患児の月齢の上昇に伴って正答率が上昇する傾向がみられた。2)ソナグラム上唇顎裂児は吸気時と排気時の音声が明瞭な一対を形成したリズミカルな音声であるのに対し、唇顎口蓋裂児では排気時の音声が極めて弱く短かく、また、1呼気の発声持続時間は全検査期間を通じて唇顎裂児で有意に長かった。3)nasalanceは唇顎口蓋裂児のHotz床撤去時、床装着時、唇顎裂児の順で高かったが、生後4カ月以後では唇顎口蓋裂児と唇顎裂児の差が拡大していた。口蓋裂による鼻咽腔閉鎖機能不全は音響解析上では早期から叫喚発声に影響を及ぼしていたが、聴覚印象とNasometerによる調査では生後4カ月以後に鼻咽腔閉鎖獲得児との差異が明確になっていた。
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