1991 Fiscal Year Annual Research Report
組織培養と染色体分染法による有用樹種の種および品種鑑定に関する研究
Project/Area Number |
02806031
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Research Institution | Kyushu Tokai University |
Principal Investigator |
戸田 義宏 九州東海大学, 農学部, 教授 (50070082)
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Keywords | 組織培養 / 染色体 / 核小体 / 仁形成部位NOR / スギ科 / 不定胚 / クヌギ / 人工種子 |
Research Abstract |
林木の種および品種鑑定法の確立は、強く望まれながらもこれといった決定的な方法は未だ確立されていない。その手段として最も有効な方法の1つは、核型分析、染色体の分染など核学的見地からの研究方法を確立し、染色体と種の特性との関係を明らかにすることである。 本研究は、まず、世界のスギ科樹木10属15種(坂口1983の分類による)について核学的研究を進め、スギの系統分類学的位置付けを明らかにすることとし、メキシコラクウショウ属、タスマニアシ-ダ-属およびスギの異数体について核学的解析を行った。尚、この間に核小体形成部位NORの観察法や染色体分染法の開発を試みた。その結果、メキシコラクウショウの核型は、スギ科樹木の核型による分類の中で、Iーグル-プ(Kopfchen type)とIIーグル-プ(Telomere type)の両方の特徴を合わせもち、タスマニアシ-ダ-属は、何れのタイプにも属さない特徴的な存在であることが明らかになった。また、NOR観察法の確立により、1細胞当りの核小体最大数とNORを有する染色体の数が一致することなどを明らかにし、さらに染色体分染法確立の足がかりを得た。スギについては2X+1、3X+1の個体についても核学的研究を進めた。 つぎに、シイタケのほだ木としても需要の望まれるブナ科樹木のクヌギについては、組織培養によるクロ-ン増殖法の確立を計った。その結果、胚軸培養および葯培養により未熟な不定胚を誘導し、さらにハ-ト型に誘導した不定胚をアルギン酸カルシウムを用いてカプセル化し、発根・発芽させることに成功した。今後、このカプセル化種子、すなわちクヌギの人工種子を用いて倍数体や異数体の作出あるいは染色体と形質の関係解析を行う必要がある。スギについては、ヒノデスギが3倍性品種であること、イワオスギが核型に特徴をもつ品種であることが判明しているが、さらに多くの品種について解析を行ないたい。
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[Publications] 戸田 義宏: "スギ科樹木の細胞遺伝学的研究(VIII)" 101回日本林学会大学論文集. 101. 495-496 (1990)
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[Publications] 香西 護: "クヌギの組織培養による不定胚形成" 101回日本林学会大学論文集. 101. 479-480 (1990)
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[Publications] 中村 未樹: "針葉樹の変異に関する細胞遺伝学的研究I" 九州東海大学農学部紀要. 9. 1-8 (1990)
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[Publications] 香西 護: "クヌギの人工種子の開発" バイオインダストリ-. 8. 60-68 (1991)
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[Publications] 中村 未樹: "針葉樹の変異に関する細胞遺伝学的研究II" 九州東海大学農学部紀要. 10. 67-74 (1991)