1992 Fiscal Year Annual Research Report
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03041038
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 豊 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (80091164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蒲 建辰 蘭州氷河凍土研究所, 助教授
姚 檀棟 蘭州氷河凍土研究所, 助教授
康 興成 蘭州氷河凍土研究所, 助教授
謝 自楚 蘭州氷河凍土研究所, 教授
窪田 順平 東京農工大学, 農学部, 助手 (90195503)
太田 岳史 岩手大学, 農学部, 助教授 (20152142)
小池 俊雄 長岡技術科学大学, 工学部, 助教授 (30178173)
幸島 司郎 東京工業大学, 理学部, 助教授 (60183802)
安成 哲三 筑波大学, 地球科学系, 教授 (80115956)
福嶌 義宏 京都大学, 農学部, 助教授 (00026402)
瀬古 勝基 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (70196971)
大畑 哲夫 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (90152230)
樋口 敬二 中部大学, 国際関係学部, 教授 (50022512)
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Keywords | チベット高原 / 水循環 / 蒸発 / 氷河 / 衛星画像 / 土壌水分 / 河川流出 |
Research Abstract |
本年度は、調査対象地域であるチベット高原中央部のタングラ山域での現地観測のために春期と秋期に各四名を中国に派遣した。この地域の水循環について実施した調査項目とそれから得られた知見、また衛星画像解析から得られた知見は以下の通りである。 (1)氷河上の積雪深計と気象計の維持、および氷温計の設置を行った。氷河上の積雪深とアルベードの変化から、冬期から春期にかけて積雪面の低下が起り、平衡線附近で氷が表面に表れることが分った。衛星写真の解析から過去4年の中でも、1988-89年も同様の傾向が見られ、この現象が蒸発などの消耗に関しこの地域の氷河変動を特徴づけていて、質量収支にも影響を与えている可能性が示唆された。積雪深の変化から、この地域では年間500mmを越す降水量が考えられることも明らかとなった。 (2)地温計と土壌水分計の維持と増設を行った。自記測定から、凍土の上面は春期には徐々に低下し、活動層はゆっくりした速度で厚くなるのに対し、秋期には短期間の間に表層全体の凍結が起ることが分った。また種々の場所における土壌水分の測定を10月に行なった所、表層の土壌水分量と、土壌の構造および表面植生の間に相関があることが明らかとなった。面的な土壌水分量や蒸発量は、陸面を表面植生状態で分類し、それに基づいて導出することができる可能性が示唆された。 (3)1988年以降の気象データは自動気象計によって得られている。冬の積雪の頻度が年により大きく異なり、積雪の多い年に冬期の気温の低下が著しいことがわかった。気温が低いと地温の低下も大きく、冬期の積雪状態が地温として記憶されることがわかり、陸面表層における気象状態のメモリー機構の存在が示唆された。 (4)河川流出量測定のための水位計を増設し、規模の異なる計3箇所の流域で自記測定を開始した。各流域によって、氷河流出の寄与率が異なる傾向が示された。 (5)MOSI衛星の画像の解析から、この地域では植生指標値(NDVI)が氷河周辺で高い値を示し、谷底で低い値となることが分った。植生指標値と植生葉面積(LAI)など蒸発に関連するパラメータとの対応関係の確立が求められている。 さらに、本計画はIHP第4期計画の一部を担っているため、研究分担者1名を2回の国際会議に派遣し、各国の観測の調整と情報交換を行った。 最終年度である平成5年度には現地長期滞在を実施し、今まで提起された諸物理過程の調査、および降水量、土壌表層での水分貯蓄量など自動測定が困難である水循環項の測定を行い、この地域における水循環の実態およびそれに対する雪氷の役割を解明する。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] AGETA,Y.: "Predictions of changes of glacier mass balance in the Nepal Himalaya and Tibet Plateau:a case study of air temperature increase for three glaciers." Annals of Glaciology. 16. 89-94 (1992)
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[Publications] 大畑 哲夫: "CREQ計画とその研究内容の概要" 水文・水資源学会誌. 5. 59-64 (1992)
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[Publications] OHATA,T.: "A case study on the influence of temporary snow cover to atmosphere- land surface system on Tibet Plateau in premonsoon season." J.Glaciology and Geocryology. 15. (1993)
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[Publications] AGETA,Y.: "Estimation of mass balance of Zepu Glacier in southeast Xizang(Tibet)." J.Glaciology and Geocryology. 15. (1993)