1991 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジ-における協力と葛藤解決に関する総合的研究
Project/Area Number |
03041046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 利貞 京都大学, 理学部, 教授 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
エデウス マサウエ マハレ山塊野生動物研究センター, 所長
上原 重男 札幌大学, 教養部, 教授 (20145965)
葭田 光三 日本大学, 文理学部, 助教授 (50059945)
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Keywords | 協力 / 葛藤解決 / 闘争 / 連合 / 分配 / 社会的知能 / チンパンジ- / マハレ山塊 |
Research Abstract |
この研究を実施する直前に、マハレ国立公園のチンパンジ-集団M群にリ-ダ-交代が起こった。新リ-ダ-はまだ集団全体をコントロ-ルできず、大人の雄間で闘争がたびたび見られている。それゆえ、協力と葛藤解決に関する研究をおこなうまたとない機会が与えられた。新リ-ダ-(第一位雄)には、4頭のライバル(二位雄、三位雄、五位雄と、群れ外にいる旧リ-ダ-)がいて、しかもライバル同士も敵対関係にあり、非常に複雑な連合関係が見られる。例えば、ある日二位と三位が連合して一位を攻撃するかとおもうと、翌日には一位と二位が連合して三位を追い払うといったことが、日常的に見られる。このようなきわめて日和見的な連合関係とは別に、もっと安定した連合、すなわち同盟もある。例えば、第四位と六位の雄は、第一位雄が闘争するさい応援するか中立を保ち、前者が他の雄に攻撃されたときは、第一位雄が救援に駆けつける。また、一位雄は、ライバル同士や、ライバルの一頭の自己の同盟者が手づくろいしていると、突進誇示によってそれを妨害し、自己に不利な同盟ができないように努力している。このような闘争の支持と妨害の戦略以外に、闘争後の和解と葛藤解決、肉の分配と支持戦略の関係、毛づくろい戦略について非常に多くのデ-タが得られた。行動資料として、野帳250冊、スチ-ル写真200本、ビデオテ-プ300時間分、音声録音15個体分などが得られ、他にDNA父子テストのための植物ワッジ標本や精液・血液標本が70個体分、寄生虫検索のための糞恒本50頭分、植物標本10点、哺乳類標本3点の収穫があった。隊員が少なくとも一人現地に滞在し、年度にまたがって大人雄間の社会関係を追求しているので、今後ともチンパンジ-の社会的知能に関する多くの資料が得られると期待できる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hamai,M.: "New records of within-group infanticide and cannibalism in wild chimpanzees of Mahale,Tanzania" Primates. 33. (1992)
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[Publications] Nishida,T.: "Left Nipple suckling Preference in wild chimpanzees" Ethology and Sociobiology. 13. (1992)
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[Publications] Tsukahara,T.: "Lions eat chimpanzees" American Journal of Primatology. (1992)
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[Publications] Nishida,T.: "Meatーsharing as a coalition strategy of an alpha male chimpanzee?In:Human Origins" The University of Tokyo Press, (1992)
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[Publications] Uehara,S.: "Characteristics of predation by the chimpanzees in the Mahale Mountains National Park,Tanzenia-.In:Human Origins" The University of Tokyo Press, (1992)