1991 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯アジアにおける稲遺伝資源の生態遺伝学的調査(第4次)
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03041091
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
平岡 洋一郎 (佐藤 洋一郎) 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助手 (20145113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SONGKRAN Chi タイ国農業省, パトンタニ稲研究センター・遺伝資源, 主任
山岸 博 京都産業大学, 工学部, 助教授 (10210345)
佐藤 雅志 東北大学, 遺伝生態研究センター, 助手 (40134043)
島本 義也 北海道大学, 農学部, 教授 (00001438)
沖野 啓子 (森島 啓子) 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (70000247)
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Keywords | 稲 / 遺伝資源 / 遺伝資源のそう失 / ラオス / タイ国 / 地球環境 |
Research Abstract |
1.ラオスにおける稲遺伝資源 ラオスの調査はは北部ルアンブラバン,中部ビエンチャンおよび南部パクセの3ヶ所で行った.北部では栽培イネは主にjaponica型の陸稲であった.ビエンチャン周辺では,栽培イネは天水田に主にモチ品種が栽培され,半分から2/3程度が改良品種,残りが在来品種であった.また水路近くには野生イネOryza rufipogon(祖先型)の集団がみられた.南部は典型的な熱帯モンス-ン地帯で,やはりモチ品種が主,改良品種の比率は半分程度であった.また貯水池のふちや水路などにO.rufipogonの集団を多数発見した. 2.タイ東北部における稲遺伝資源のそう失(genetic erosion) ラオスの帰途,タイ国東北部でgenetic erosionの実態調査を行った.野生稲O.rufupogonについては,主に道路の拡巾工事などの影響をまともに被り,集団自体が破壊されたケ-スが多かった(全体の約2/3).残された地点でも水の汚染などで集団自体が小さくなるなど,全体として絶滅への道を歩みつづけていることがわかった.栽培イネでは,8年前バンコクから200km付近のところまで広く栽培されていたモチ品種が減少する傾向をみせた.また,モチ品種のほとんどがRD6などの有力改良品種におきかえられ,品種レベルでのerosionが一層すすんでいることが明らかとなった. 3.バンコク周辺の定点調査 8年前からの継続課題であるバンコク市周辺の7定点(野生稲)の調査を今回も行った.未曽有の開発ブ-ムによる道路の拡巾,工場建設により,同市周辺の水田は急速に減少している.野生稲の集団も多くが絶滅または縮小した.特に東北部サラブリ町周辺の4つの地点はすべて絶滅した.今後それらが再生するかどうか,再生するとすればどの様な形で再生するかを観察することは極めて重要と思われるので,ひきつづき調査を継続したい.
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