1992 Fiscal Year Annual Research Report
政治思想におけるモダンとポスト・モダン-日米欧を中心とする比校研究
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03301070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 毅 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 教授 (90009803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正弥 千葉大学, 法経学部, 助教授 (60186773)
森 政稔 東京大学, 教養学部, 助教授 (70200384)
杉田 敦 新潟大学, 法学部, 助教授 (30154470)
川崎 修 北海道大学, 法学部, 助教授 (80143353)
小野 紀明 神戸大学, 法学部, 教授 (10116197)
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Keywords | モダニズム / ポストモダニズム / 比校思想史 / 現代政治思想 / 現金社会理論 / ポスト産業社会 |
Research Abstract |
本年度は、研究の最終年度であり、昨年度において不十分だった点を補完すると共に、当共同研究の成果を総括することがめざされた。当初の計画における「ポストモダニズム」の日米欧の比較思猛史的研究という視点をより前面に打ち出した孝察の結果、以下のような点が明らかになった。第一に、近代批判としてのポストモダニズムの理論的、社会的機能は、当該社会がどのような「近代」社会や前近代社会を歴史的に持っているのかによって大きくかわってくるということである。即ち、アメリカのようにそもそもが伝統社会と切れたところに起源を持つ地域と、ヨーロッパや日本のように、近代批判が容易に伝統回帰と混ざり合いかねない地域とでは「近代的なるもの」の評価と歴史的位置づけも大きく異なっている。特にこのことは、日本を論じるに際してとりわけ議論に複雑さをもたらしている。というもの、しばしば、ポストモダン論の文脈において、従来日本の前近代的ないし反近代的要素とされてきたものの再評価の動きがあったからである。しかし、第二に、このことは、近代的・モダンなるもの自体の多様性を明るみに出すこととなった。民主主義、自由主義、市場経済、産業社会、技術的合理性等といった近代社会の諸価値は、必ずしも相互に1体でないのみならず、しばしば、見方によっては予盾し合うものでさえある。そして、ポストモダニズムの評価をめぐる論争は、近代的なるもの自体の多様性・多面性をどう解釈するかの論争だといっても過言ではないことが鮮明になった。さらに、第三に、ポストモダニズムの世界的な同時性は、二十世紀の社会と社会思想が持つ、国境を越えた伝搬という性質の文脈において理解すべきであることが明らかにされた。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] 佐々木 毅: "「既成イデオロギーの解体と新たな模索」" 『思想』821号. 5-24 (1992)
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[Publications] 佐々木 毅: "「苦悶する民主政」" 『岩波講座・社会科学の方法Iゆらぎのなかの社会科学』、名岩波書店、. 85-115 (1992)
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[Publications] 川崎 修: "「『現金思想』と政治学」" 小野紀明編『モダーンとポストモダーン』,木鐸社. 7-40 (1992)
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[Publications] 川崎 修: "「権力論の現代的諸相」" 『岩波講座・社会科学の方法』第7巻.
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[Publications] 飯田 文雄: "「ハロルド・ラスウェルの政治理論---科学・権力・政治理論(3)」" 『国家学会雑誌』、105巻7・8号. 543-586 (1992)
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[Publications] 坂本 多加雄: "「『企業者』観念の発見と日本の伝統」" 『近代日本研究』14号. 303-331 (1992)
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[Publications] 小林 正弥: "「政治的クライエンテリズムと政治的シンクレティズム---その概稔の構造---(3)」" 『国家学会雑誌』、105巻5・6号. 105. 391-490 (1992)
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[Publications] 小林 正弥: "「政治的クライエンテリズムと政治的シンクレティズム---その概念の構造---(4)」" 『国家学会雑誌』、105巻9・10号. 105. 677-791 (1992)
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[Publications] 小林 正弥: "「政治的クライエンテリズムと政治的シンクレティズム---その概念の構造---(5)」" 『国家学会雑誌』(予定). 106. (1993)
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[Publications] 小野 紀明: "「共同存在か単独者か---シェーラーの人格主義的自由主力(1)」" 『神戸法学雑誌』、第42巻1号. 42. 1-50 (1992)
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[Publications] 小野 紀明: "」共同存在か単独者か---シェーラーの人格主義的自由主義(2)」" 『神戸法学雑誌』、第42巻2号. 42. 271-321 (1992)
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[Publications] 小野 紀明: "「性的人間と政治的人間---政治概念の再検討のために」" 溝部英章他『近代日本の意味を問う』、木鐸社. 7-38 (1992)
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[Publications] 小野 紀明: "「美的形式と政治的秩序化---ユンガーの形態概念をめぐって」" 『神戸法学雑誌』、第431号. 43. (1993)
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[Publications] 杉田 敦: "「アメリカ保守主義とその論敵」" 本鐸社,(アメリカ研究セミナーシリーズとして近日刊行予定).
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[Publications] 杉田 敦: "「政治における『近代』と『脱・近代』」" 『岩波講座・社会科学の方法』第7巻所収、.