1993 Fiscal Year Annual Research Report
移植拒絶反応及び自己免疫疾患の病態におけるIgD-IgD受容体系の関与の研究
Project/Area Number |
03454156
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江川 滉二 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00012724)
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Keywords | IgD / がん / がん抗原 / 胎児抗原 / がん免疫 |
Research Abstract |
癌に対する生体反応におけるIgDの関与の生物学的意義について、主としてIgDの認識する抗原を中心として研究を行なった。マウス担癌体におけるIgD応答の認識標的の一つとして、non-classicalな組織適合クラスI抗原の一つであるQ5抗原があることをすでに明らかにし報告したが、IgD応答の意義を明らかにするためにこのQ5抗原の発現及びこれに対する他の生体反応についての観察を行なった。まずSV40T抗原又はそのおんど感受性変異体によって形質転換されたマウス繊維芽細胞を用いた実験によって、Q5抗原の発現が細胞の癌化に直接的に伴うものであることを確認した。次にQ5抗原に対する生体固有の反応としてγ/δT細胞応答が存在することをも明らかにした。IgD応答及びγ/δT細胞応答が癌に対する一種の自然抵抗性として存在していることにつき、その成立する原因について考究した結果、Q5抗原が胎児性抗原として発現されており、マウスの免疫系は胎児の一時期にこの抗原に接触して感作されていることを予想し、免疫組織学的な検討を行なった結果、この考えを強く支持する結果が得られた。この結果は、IgD応答が癌細胞の発現する抗原のうち、胎児の特定の時期にも発現する癌胎児性抗原に対してのみ起こり得るものであることを示しており、当初予測したように自己免疫一般や同種異系組織移植に際して起こるものではないことの理由を示すものと考えられる。また、血清中のIgDの生理活性として、IgD依存細胞介在性細胞障害反応の存在を明らかにしてきたが、この反応の詳細をさらに研究する目的で抗Q5IgD単クローン抗体の作製を試みた。この試みはハイブリドーマ作製に用いたリンパ腫細胞もQ5抗原を発現しているために困難であったが、leucine methyl esterを用いて細胞障害性細胞を除去することによって困難は克服され、癌抗原に対する多数の単抗体やIgDクラスの単抗体を得る事が出来たが、IgDクラスの抗Q5単抗体の取得には未だ至っていない。
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[Publications] Takae Tanino: "Detection of allogeneic Qa/TL and Ly specificities on murine tumor cells with IgD in tumor-regressor serum" Cancer Immunology Immunotherapy. 35. 230-236 (1992)
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[Publications] Takahiro Okazaki: "Recognition of the Qa-2^k tumor antigen by T cell receptor γ/δ of an immunopotentiator-induced tumoricidal T cell of mice" Cancer Immunology Immunotherapy. 36. 83-88 (1993)
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[Publications] Naohiro Seo: "Utilization of leucine methyl ester for the generation of hybridomas producing mAbs specific to tumor-associated antigens" Cancer Immunology Immunotherapy. 37(in press). (1994)