1991 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病因に関与する脳内ド-パミンニュ-ロンおよびグルタミン酸ニュ-ロンの研究
Project/Area Number |
03454287
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
融 道男 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20013972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 明子 東京医科歯科大学, 医学部, 技官 (40210992)
南海 昌博 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (20218069)
渋谷 治男 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (10158959)
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Keywords | 精神分裂病 / ド-パミン / ド-パミンD2受容体 / グルタミン酸 / クリシン結合部位 / アスパラギン酸 / シグマ受容体 |
Research Abstract |
精神分裂病死後脳11例、対照脳10例について、大脳皮質17部位のシグマ受容体を ^3HーDTGをリガンドとし、ハロペリド-ルで特異結合を算出する方法で測定した。外側後頭側頭皮質で分裂病群の結合値が有意に高かったが、他の16部位では有意な変化はみられなかった。次に同じ脳シリ-ズ(分裂病14、対照10例)を用い、31脳部位においてLーアスパラギン酸を測定した。Lーアスパラギン酸の値は、死亡時年齢と有意な負の相関を示し、死後凍結時間を有意な正の相関を示した。年齢、死後凍結時間は両群の間に有意差はなかったが、年齢でデ-タを補正(ANCOVA)すると、眼窩皮質で分裂病群に高値が認められ、死後凍結時間で補正すると、眼窩皮質、前頭眼野など7部位で有意な高値が認められた。次にNMDA受容体とカップルし、この受容体の機能をアロステリックに調節しているストリキニ-ネ非感受性グリシン結合部位を同じ脳シリ-ズで測定した。大脳皮質16部位中6部位で分裂病群に有意な高値を認めた(前運動野、体性感覚野、縁上回、角回、一次視覚野、二・三次視覚野)。減少している部位は一つもなく、この増如は特に縁上回、角回においては両群の値が歴然と離れていた。両部位のスキャッチャ-ド解析により、この変化はBmaxの増加によるものであり、K_Dには差がみられなかった。以上の結果のうち、大脳皮質6部位で認められたグリシン部位の増加の所見は今まで分裂病死後脳で測定されたことがないことと、その結果が同じ脳で見出されたカイニン酸受容体やNMDA受容体の変化と同方向である点で重要であると思われる。この結果は今回分析した慢性分裂病脳内にはグルタミン酸ニュ-ロンの低活動があることを改めて推測させた。同じ分裂病脳13例を用いてド-パミンD2受容体のDNAを増殖し、7エクソンの全塩基配列を解析中であるが、現在まで塩基置換などの変異は見出されていない。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] 融 道男: "精神分裂病の生物学的仮説の発展" 神経精神薬理. 13. 61-66 (1991)
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[Publications] T.Yoshikawa,H.Shibuya,S.Kaneno,M.Toru: "Blockade of behavioral sensitization to methamphetamine by lesion of hippocampoーaccumbal pathway" Life Science. 48. 1325-1332 (1991)
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[Publications] 吉川 武男ほか: "分裂病あるいは逆耐性現象におけるグルタミン酸ニュ-ロンの関与" 精神薬療基金研究年報. 22. 247-254 (1991)
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[Publications] 融 道男: "中脳ー辺縁・前頭皮質dopamine系" 脳と神経. 43. 319-329 (1991)
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[Publications] 融 道男,山田 佐登留: "躁うつ病仮説の現況" 精神科治療学. 6. 1023-1029 (1991)
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[Publications] 融 道男: "精神病裂病とグルタミン酸" 医学のあゆみ. 159. 169 (1991)
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[Publications] M.Toru,A.Kurumaji,S.Kumashiro,M.Ishimaru,I.Suga,T.Nishikawa: "Dopaminergic and glutamatergic abnormalities in postmortem schizophrenic brain" Biological Psychiatry (Proc.of 5th World Congress of Biological Psychiatry). 1. 501-503 (1991)
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[Publications] 仙波 純一,融 道男: "せん妄の生化学的病因をめぐって" 集中治療. 3. 1163-1167 (1991)
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[Publications] 融 道男: "抗精神病薬のド-パミン関連副作用について" 精神神経薬理シンポジウム. 17. 25-32 (1991)
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[Publications] M.Toru,A.Kurumaji,S.Kumashiro et al.: "Excitatory amino acidergic neurons in chronic schizophrenic brain" Mol.Neuropharmacology.
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[Publications] A.Kurumaji,M.Ishimaru,M.Toru: "( ^3H)AMPA binding to human cerebral cortical membranes:minimal changes in postーmortem brains of chronic schizophrenia" J.Neurochem.
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[Publications] H.Shibuya,H.Mori,M.Toru: "Sigma receptors in schizophrenic cerebral cortices" Neurochem.Res.
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[Publications] M.Toru,H.Shibuya,H.Mitsushio,T.Nishikawa,I.Suga,Y.Kiuchi (ed.by T.Nakazawa): "Taniguchi Symposia on Brain Sciences No.14:Biological Basis of Schizophrenic Disorders" Karger,Basel, 91-100 (1991)
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[Publications] 融 道男(編): "精神科難治症例ー私の治療" 中外医学社, 369 (1992)