1992 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病因に関与する脳内ドーパミンニューロンおよびグルタミン酸ニューロンの研究
Project/Area Number |
03454287
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
融 道男 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20013972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 明子 東京医科歯科大学, 医学部, 技官 (40210992)
山田 和男 東京医科歯科大学, 医学部, 医員
石丸 昌彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50242219)
車地 暁生 東京医科歯科大学, 医学部, 助手
渋谷 治男 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (10158959)
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Keywords | 精神分裂病 / NMDA受容体 / グリシン結合部位 / グルタミン酸 |
Research Abstract |
前年度の研究で、KNDA受容体とカップルし、この受容体の機能をアロステリックに調節しているストリキニーネ非感受性グリシン結合部位を、精神分裂病死後脳13例、対照脳10例について測定した。その結果、大脳皮質16部位中6部位で分裂病群に有意な高値を認めた。そこで今年度は、この6部位(前運動野、体性感覚野縁上回、角回、一次視覚野、二・三次視覚野)についてスキャッチャード解析を行った。いずれの部位でも親和性(Kd)は分裂病群と対照群の間に有意差はみられなかった。最大結合数(Bmax)は4部位で分裂病群が有意に高かった。角回と体性感覚野では、死亡前40日以上にわたって抗精神病薬を服用していなかった「非服薬群」において、縁上回、角回、前運動野では「服薬群」、又縁上回、角回では分裂病群(「服薬群」および「非服薬群」)において対照群と比較して有意な増加がみられた。これらの結果が服用していた抗精神病薬の影響あるいは死後変化による可能性を否定するために、次の実験を付け加えた。デカン酸ハロペリドール(100mg/kg)をラットに4週間毎に3回筋肉内に投与し、初回投与から12週後に大脳皮質膜標品についてH-グリシンを用いてスキャッチャード解析を行った。Bmax、Kdとも対照群との間に差を認めなかった。又死後変化の影響について検討するために、断頭後頭部を室温(24℃)に1・5、3、6、12時間放置したのち脳を取り出し、50nMの^3H-グリシンを用いて結合実験を行ったが、どの時間でもグリシン結合値には有意な変化はみられなかった。以上の実験から、この研究において見いだされた分裂病死脳におけるNMDA受容体のグリシン結合部位の増加は、分裂病の病態に深く関与している可能性が示唆された。分裂病脳におけるグリシン結合部位の増加は、グルタミン酸ニューロンの低活動に対する代償的変化であると推定される。
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Research Products
(18 results)
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[Publications] 融 道男 ほか: "分裂病の神経化学的病因仮説" 臨床精神医学. 21. 179-185 (1992)
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[Publications] 阿部 哲夫ほか: "精神分裂病の脳形態のMRI研究と生物学的仮説" 臨床精神医学. 21. 187-196 (1992)
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[Publications] 山田 和男ほか: "精神病惹起物質(MAP,PCP)のコレシストキニンmRNAレベルに及ぼす作用" 精神薬療基金研究年報. 23. 193-199 (1992)
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[Publications] 白石 弘巳ほか: "抗精神薬大量投与中の精神分裂病患者にみられた熱射病の一例" 精神医学. 34. 027-235 (1992)
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[Publications] Shibuya,H.ほか: "Shigma receptors in schizophrenic cerebral cortices" Neurochemical Research. 17. 983-990 (1992)
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[Publications] 長瀬 泰子ほか: "精神分裂病患者の脳波コヒーレンスについて -無投薬例について-の検討" 臨床脳波. 34. 373-379 (1992)
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[Publications] Toru,M ほか: "Excitatory amino acidergic neurones in chronic schizophrenic brain" Molecular Neuropharmacoloqy. 2. 241-243 (1992)
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[Publications] Kurumaji,A. ほか: "2-[^3H]Amino-3-hydroxy-5-methylisoxazole-4-propionic acid binding to human cerebral cortical menbranes;minimal changes in postmortem brains of chronic schizophrenics." Journal of Neurochmistry. 59. 829-837 (1992)
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[Publications] 石丸 昌彦ほか: "慢性分裂病死後脳の大脳皮質におけるストリキニン非感受性グリシン結合部位に関する研究" 脳と精神の医学. 3. 315-319 (1992)
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[Publications] 融 道男: "精神分裂病ードパミンとグルタミン酸ニューロンの異常ー" Clinical Neuroscience. 10. 1174-1176 (1992)
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[Publications] Ishimaru,M. ほか: "NMDA-Associated qlycine binding site increases in schizophrenic brains" Biological Psychiatry. 32. 379-380 (1992)
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[Publications] Watanabe,A. ほか: "Measurement of qlutamate,aspartate and qlycine and its potential precursors in human brain using high-perfor-mance liquid chromatography by pre-column derivatization with diethylamino-azobenzene sulphonyl chloride" journal of.Chromatography. 583. 241-245 (1992)
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[Publications] Motohashi,N. ほか: "Effect of sulpiride and oxypertine on the dopaminergic system in the rat striatum" Neuropsychobiology. 25. 29-33 (1992)
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[Publications] Nagase,Y. ほか: "EEG coherence in unmadicated schzophrenic patients:topographical study of predominantly never medicated cases." Biological psychiatry. 32. 1028-1034 (1992)
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[Publications] 融 道男: "「精神分裂病はどこまでわかったか」 第5章神経伝達異常はどこまで解明されたか -ドーパミン・グルタミン酸仮説を中心に-" 町山幸輝、樋口輝彦編、星和書店, 99-121 (1992)
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[Publications] 融 道男: "「精神医学と生物学の語らい-その源流と現代の視点」 2章 生物学的精神医学における分裂病研究のストラテジー-序論" 中沢恒幸、小島卓也、三国雅彦編、学会出版センター, 11-21 (1992)
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[Publications] 車地 暁生ほか: "「精神医学と生物学の語らい-その源流と現代の視点」 3章 精神分裂病と興奮生アミノ酸" 中沢恒幸、小島卓也、三国雅彦編、学会出版センター, 23-40 (1992)
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[Publications] 融 道男 (編): "抗精神病薬の副作用" ライフサイエンス, 126 (1992)