1992 Fiscal Year Annual Research Report
唇顎口蓋裂患者の矯正治療に伴う呼吸・嚥下機能の相関と鑑別診断に関する研究
Project/Area Number |
03454482
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大木葉 孝宣 新潟大学, 歯学部附属病院, 講師 (40160444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 卓麻 新潟大学, 歯学部附属病院, 助手 (30225718)
仁平 孝幸 新潟大学, 歯学部附属病院, 助手 (30228259)
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Keywords | 唇顎口蓋裂患者 / 矯正治療 / 呼吸パターン / 嚥下パターン / エレクトロパラトグラフ / フローネーザリティグラフ / 安静時 / 嚥下時 |
Research Abstract |
本研究で新たに開発した「呼吸・嚥下機能解析プログラム」を用いて,呼吸と嚥下機能の両者及び呼吸・嚥下の相互関係が短時間で自動解析できる「呼吸・嚥下機能解析システム」が平成3年度に完成した。本システムを用いて,口蓋裂及び反対咬合患者の矯正治療後に採取した資料の解析結果から,下記のような幾つかの新しい知見が得られた。 1.当初設当した安静時,水嚥下時,唾液嚥下時,及び[asa]・[ata]発音時に資料採取する有効性が再確認された。 2.正常咬合者の呼吸・嚥下パターンから得られた正常モデルと比較することで,治療後の機能改善度が判定できた。 3.鼻咽腔閉鎖が良好と思われる口蓋裂患者でも,上顎の狭窄が著しいと舌は低位でかつ後退し下顎が回転していっそう鼻呼吸しにくいことがわかった。 4.さらに,常に口を開けているため扁桃腺も腫れやすく,咽頭部の気道確保が十分でなくなる。この悪循環が顎態だけでなく,呼吸・嚥下・咀嚼障害をも増悪させていることが確認された。 5.咬合接触していない側方歯を有する小児患者では,食物を十分に咀嚼できないため身体の発育が遅れがちである。 6.顎裂部を中心に垂直的に顎態が変形している患者では,とくに嚥下運動の不安定性が著しい。 7.反対咬合患者では上顎の狭窄は軽度であり,舌は低位であるが前方位をとるのが多い。鼻アレルギーや扁桃腺・アデノイド肥大があると口呼吸せざるを得ないが,鼻呼吸も不十分ながら自発的にできる。 8.以上から,とくに狭窄が著しい小児の唇顎口蓋裂患者では,側方の咬合接触を混合歯列期までにQuad helixで作ると,舌が自然に上昇でき鼻呼吸しやすくなることが確認された。このことは時機を得た矯正治療が,嚥下・呼吸機能の改善に寄与することが示唆された。 今後,矯正治療の保定後とも比較検討し,呼吸・嚥下機能の鑑別診断を確立し,口蓋裂患者の治療計画策定に反映させたい。
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