1993 Fiscal Year Annual Research Report
唇顎口蓋裂患者の矯正治療に伴う呼吸・嚥下機能の相関と鑑別診断に関する研究
Project/Area Number |
03454482
|
Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大木葉 孝宣 新潟大学, 歯学部・附属病院, 講師 (40160444)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 卓麻 新潟大学, 歯学部・附属病院, 助手 (30225718)
岩崎 智之 新潟大学, 歯学部, 助手 (00251835)
|
Keywords | 唇顎口蓋裂患者 / 矯正治療 / 呼吸パターン / 嚥下パターン / エレクトロパラトグラフ / フローネーザリティグラフ / 安静時 / 嚥下時 |
Research Abstract |
咀嚼の次に続く「嚥下」が良好に行なわれ鼻咽腔閉鎖も完全になされることで,人体に不可欠な生命維持の役割を担える。咀嚼-嚥下-呼吸は三味一体の相互作用で成立し,中でも最重要な役目をしているのは「舌」である。それゆえ,「咀嚼障害」の客観的な判定基準の一つとして,本研究で新たに開発した「呼吸・嚥下機能解析プログラム」を用いた「呼吸・嚥下機能解析システム」は画期的な手法であろう。今回本システムを用い,7〜20歳の口蓋裂患者の保定後に採取した資料及び治療前のと比較した解析結果から,下記の新知見が得られた。 1.安静時と水嚥下時,及び[asa] [ata]発音時は,高い再現性が認められた。2.正常咬合者の呼吸・嚥下パターンと比較し,また治療後及び保定後の結果から治療前の状態を再判定することで,予後の良否が推測できるとともに機能改善度も判定できた。3.上顎の側方狭窄はないが下顎前歯の唇側傾斜による反対咬合の口蓋裂患者では,嚥下時の舌接触運動が不規則であった。4.鼻咽腔閉鎖が良好な口蓋裂患者でも,上顎の狭窄が著しいと舌は低位でかつ後退し下顎も回転しいっそう鼻呼吸しにくい。5.咬合接触しない側方歯を有する小児患者では,咀嚼と嚥下が不規則となるため食物の丸飲みを強いられ心理的にも身体発育上でも不利益となる。6.顎裂部を中心に垂直的な顎態の変形により,嚥下運動の不安定性が著しい。8.狭窄が著しい小児の口蓋裂患者では側方の咬合接触を混合歯列期までにQuad helixで作り,正しい舌位置の習得に下顎へタングクリブ併用が著効である。これで舌は上昇でき鼻呼吸しやすくなることが確認された。このことは時機を得た矯正治療が嚥下・呼吸機能の改善に寄与し,呼吸・嚥下機能の鑑別診断を確立して治療計画策定に反映させることが有益と示唆された。上記結果の一部は平成5年11月の日本矯正歯科学会にて学術展示及びポストセミナーにて講演発表した。
|