1991 Fiscal Year Annual Research Report
天蚕と柞蚕の正逆交雑種における実用諸形質に関する調査研究
Project/Area Number |
03556008
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 滉 信州大学, 繊維学部, 教授 (80021145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 勝 信州大学, 繊維学部, 助手 (10021164)
田中 一行 信州大学, 繊維学部, 教授 (00021139)
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Keywords | 野蚕の正逆交雑種 / 繭層中の金属イオン / 精練と染色性 / 耐光堅ろう度 / 野蚕の雌雄別実用形質 / 近親弱勢 / ウイルスに対する感染抵抗性 / 染色体構成と形質 |
Research Abstract |
天蚕における近親弱勢の対策として、虫質に優れる柞蚕の形質を天蚕に導入しようと交雑育種を試みてきた。しかし、この交雑種はF_1のみ飼育可能で、継代は両親におけるゲノムの違いから無理であることが判明した。そこで本研究では、第1に年2回飼育を可能とした交雑種(F_1)の繭が、天蚕のそれより優る点のあることに着目し、その特性を金属イオンの含有量から両親のそれと比較した。第2に、天蚕の繭質は不均一で繰糸上に問題があることから、選抜の予備調査として、両親および交雑種の性比と雌雄別の実用形質の2点について調べ、以下の結果を得た。1.繭層中の金属イオンとしては、Ca^<2+>,K^+,およびMn^<3+>の含有量を測定した結果、乾燥繭層重1g当り柞蚕14.6mgを1とした場合、天蚕約5.5倍、交雑種約2.3倍と、とくに天蚕において多かった。Ca^<2+>は、営繭後の蚕排泄物由来のCaC_2O_4であり、これは精練により99%以上除去できる。なお、天蚕と交雑種ともにセリシン中に柞蚕より多量のCa^<2+>を含み、交雑種は形質的に天蚕の影響を受けているものと考えられた。K^+含有量は1.2〜3.2mg、Mn^<3+>は0.15〜0.07mgの範囲にあり、前者では天蚕>柞蚕>交雑種、後者では柞蚕>交雑種>天蚕の関係がみられた精練後のK^+は系統間に差がなく、Mn^<3+>では柞蚕と同様に交雑において減少率が少ないことから、柞蚕に類似する傾向のあることが認められた2.繭重における雌雄別頻度の調査から、雄には個体間の変異が少なく、雌にはかなりのバラツキがみられた。また、性比では雄>雌の関係がいずれの系統でも認められた。3.性比に差があることについては、幼虫期のNPV感染抵抗性の調査から、雌ヘテロの染色体構成が体質を虚弱にしている原因の1つであると推定された。4.当面の作柄の安定対策としては、飼育場所を異にした天蚕(なるべく遠隔地)を交配する方法が、有効であると結論された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 小林 勝,田中 一行: "ゲノムを異にする絹糸虫の器官発生分化に関する細胞学的研究" 平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書. 1-27 (1991)
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[Publications] 田中 一行,小林 勝: "ヤママユガの幼虫皮膚の超微形態" 日本蚕糸学雑誌. 60. 48-54 (1991)
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[Publications] 小林 勝,田中 一行: "テンサンとサクサンの種間雑種(F_1)における繭糸の性状について" 信州大学繊維学部付属農場研究報告. 14. 17-21 (1991)
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[Publications] 小林 勝・米川 昌志,横山 マルシア 紀子・中垣 雅雄・田中 一行: "ヤママユガとサクサンの種間雑種(F_1)における生態学的性状と精子形成に関する微細形態学的研究" 日本応用動物昆虫学会会誌. 36. (1992)
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[Publications] 小林 勝,長谷川 裕紀,田中 一行: "ヤママユガ,サクサン及びその交雑種の性比と雌雄別の実用形質" 日本蚕糸学雑誌. 61. (1992)
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[Publications] 小林 勝: "天蚕Science&Technology" 編者・赤井 弘・栗林 茂治 (株)サイエンスハウス,東京, 247 (1990)
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[Publications] M.KOBAYASHI and K.TANAKA: "WILD Silkmoths '89・'90" International Society for Wild Silkmoths, 180 (1991)