1991 Fiscal Year Annual Research Report
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03610164
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 隆志 筑波大学, 歴史人類学系, 助教授 (50191416)
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Keywords | 検注帳 / 検注名寄帳 / 大田文 / 得宗家検注 / 国検 / 内検帳 / 若狭国太良荘 / 播磨国大部荘 |
Research Abstract |
荘園土地台帳の歴史的性格を、史科学的に、また荘園現地との対応関係から考察して、荘園制自体の社会的・歴史的性格を究明しようとするものであるが、本年度は若狭国太良荘と播磨国大部荘について、検注帳の原本写真での検討と荘園現地調査を実施した。新たに究明した点のうち主なものは次の通りである。1.若狭国太良荘について、(1)太良荘立券時の検注帳を東寺百合文書のなかに見つけ出すことができたが、この帳面は内容的には国検帳を継承するもである、(2)荘園確立期の建長6年検注では、検注結果を検注名寄帳として名主に給付していて、これが名田知行の台帳として使用された、(3)嘉禎2〜3年の国検は若狭国全体の所領を対象にしているが、この結果を記している文永2年惣田数帳(大田文)を検討するに、若狭遠敷郡の荘園・公領は海岸部の生業と強く結び付いている、(4)正安4年の得宗家検注は新田・畠地までをも対象としており、また知行方式の点でも、従来の荘園支配を前進させている、(5)この得宗家検注の帳面に記される水田の字名は現地調査によっても確認できるのはわずかである、(6)得宗家検注は隣りの西津荘でも見られ、ここでも知行方式を改めている。2.播磨国大部荘について、(1)この荘園では南北朝・室町期の検注帳が31種確認できる、(2)宝徳2年領家方内検帳を、原本写真にもとづき、テキストを作り、史料的性格を検討するに、記載様式・文字からして他に原簿があること、直接的には名ごとの不作田・損田の額を把握するのを目的としている、(3)この帳面に記される水田一筆ごとの字名は現地調査でも確認されるのはわずかである、(4)名は加古川氾濫原と東条川沿いに分布するが、この荘園と河川水運との関係を今後は重視すべきである。以上。
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