1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610170
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
小山 靖憲 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50031802)
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Keywords | 熊野 / 那智 / 参詣 / 参詣曼茶羅 / 旦那売券 |
Research Abstract |
本研究の目的は,熊野三山(本宮・新宮・那智)のうち,中世末期の室町・戦国時代にいたると,那智が熊野信仰の中心になることの歴史的意義を解明することにあり、次の二つの課題を設定した。 1.那智を描いた参詣曼茶羅は十数本も遺存しており,この遺存量は他の参詣曼茶羅とくらべると異例の多さであり,その理由を明らかにすると同時に,各々の伝来の経緯や構造・図像の異同関係を分析する。 2.数百点にのぼる旦那売券が那智には伝来しており,これを収集・分析し,特に年代・地域・階層について系統的に整現することにより,熊野信仰の全国的な広がりを歴史的に跡づける。 平成3年度は,主に1の課題に取り組み,那智参詣曼茶羅が所蔵される佐渡・奈良の他,地元の那智に出張し,その原本を詳しく関覧し,写真撮影などを実施した。また、和歌山県立博物館などの協力も得て,主な写真を入手することができた。これらについて構図・図像などを分析すると,2〜3の系統に分かれるのではないかという仮説を立てることができた。なお精査を続けることによって実証的な成果にしたい。なお,現地の景観と個々の図像との関係についても,一定の成果を得たがさらに詳細な検討を必要とする。 2の課題については,平成4年度に集中的に取り組みたいが,若干の予備的な考察を行った。まず,九州国東地方に出張し,熊野信抑と当地域の修験との関係について,重要な知見を得た。また,熊野信仰と葛城修験との関係についても考察する必要が生じたので,九条家文書について,特に犬鳴山と日根荘関係の史料を若干分析した。 平成3年度は分析の途中であり、また予備的な考察にとどまっている点が多いので,研究成果は最終年度に一括して公表したい。
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