1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610196
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
関内 隆 岩手大学, 教育学部, 助教授 (50125473)
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Keywords | エドワ-ド期イギリス / イギリス1910年総選挙 / 「二つのイギリス」 |
Research Abstract |
1、第一次大戦前のエドワ-ド期イギリスにおける産業編成を検討し、ランカシャ-、ヨ-クシャ-、北東部イングランド等の主要な工業中心地域と、ロンドン、南部イングランドの流通・金融中心地や典型的農村地帯への地域的分裂の実態を明らかにした。また、職業統計、社会階層に関する同時代資料の分析から、当該期における社会諸階層の分布状況に検討を航える作業を行い、とりわけ、従来の研究史で等閑に付される傾向にあった下層中産階級として概念化しうる流通産業従事者、事務職員等の重要性に注目した。さらに所得・富の地域的分布におけるロンドン・南部イングランドへの偏重の問題を考察し、いわば社会経済上の「二つイギリス」への分裂の実態を解明した。 2、これらの地域的特質と社会階層状況が政治的レベルにおいていかなる選挙行動パタ-ンとして表出するか、という問題を解明するために1910年総選挙の検討を行った。この中で、北部イングランドの工業関係者(企業家・労働者)は、自由党と労働労の支持基盤として現れ、南部イングランド・ロンドンの農村利害、金融・流通利害、下層中産階級は統一党(保守党)を支持し、エドワ-ド期社会の経済社会的分裂は政治的分裂に先鋭化したことが明らかになった。 3、今後はエドワ-ド期イギリスの社会的矛盾の実態を把握することが課題となる。その際、自由党政権に影響力をもった自由党急進派の社会認識のみならず、政府の政策批判を展開した保守党急進派の議論にも注目したい。後者の社会認識を取り上げる意味は、当該期が抱えていた諸問題を多面的に明らかにしうると同時に、ナショナリズムの社会的基盤をも解明する糸口にもなると考えるからである。
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