1992 Fiscal Year Annual Research Report
極微量元素の超クリーン分析法の開発とアボガドロ定数精密測定への応用
Project/Area Number |
03640482
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
白幡 浩志 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (00002882)
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Keywords | 微量鉄 / クリーン実験室 / 同位体稀釈質量分析法 |
Research Abstract |
平成4年度は、前年度に引き続き、微量鉄の同位体希釈表面電離質量分析法の開発に焦点を絞って研究した。 鉄は環境中に普遍的に存在する鉄のため、各種材料、特に高純度な珪酸塩物質中に存在する超微量鉄を高い信頼度で分析することは、最も困難な分析の一つである。微量鉄の定量分析法は、比色法、炎光光度法、原子吸光法など多数存在する。しかしこれら何れの方法も、いくつかの標準溶液による検量線を作成し、それと対照することにより物質中の鉄濃度を決定する、相対分析法である。従って(1)検量線作成による誤差、(2)分析試料中の微量鉄の抽出・濃縮に伴う収率による誤差、(3)分析操作中に試料に入り込む、試薬や器具類からの汚染による誤差、(4)実験室環境中の鉄及び分析者自身からの汚染による誤差、などが要因となり精度、確度とも高い分析が極めて困難であった。 本研究は、以上のうち(1)〜(2)による誤差を排除するため、同位体希釈質量分析法を採用し、特に高精度絶対分析法として確立されている表面電離型質量分析装置を用いた。(3)による誤差を除くため、純水および試薬はSub-boiling法により精製し、鉄ブランクを極限にまで低減させた。(4)の問題は、室蘭工業大学に設置されているクリーン実験室を用いて対処した。また分析者は特殊な実験衣を着用し、使い捨てポリエチレン手袋を装着して操作した。以上の様なクリーン実験技術に基づき試行錯誤の結果、SiO_2+H_3PO_4を安定剤とし、定量限界0.2ng(絶対量)の分析に成功した。純水のブランク測定の結果は、5.9ng/Lであったが、これはクリーン実験室の環境からの汚染が大きく影響した結果である。本実験室内の鉄汚染量は、2.6ngであることが確認された。Pb、Cd、Znその他の元素のブランク値は無視出来る程低値であることが確認されており、環境中の鉄ブランクにより定量限界が規制されることが確認された。
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