1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640521
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
安井 隆次 高知大学, 理学部, 教授 (20028161)
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Keywords | アミノカルボン酸錯体 / コバルト錯体の立体化学 / 光学活性錯体 / CDスペクトルと絶対配置 / 炭素核NMR / コバルト錯体の光反応 / コバルト-炭素結合錯体 |
Research Abstract |
光学活性なβ-[Co(tndp)(en)]cl(tndp:trimethy lenediamine-N,N'-diproπ‐onate)の水溶液について、昨年度と同様の方法で光照射を行い、カラムクロマト法によって安定なCo-C結合を有する光学活性錯体を分離し、結晶として単離した。CDスペクトルデータからその絶対配置を推定した。また、本年度は、新規錯体として[Co(Me_2-eddp)(en)]Br(Me_2-eddp:ethylenediamine-N,N'-dimethyl-N,N'-dipropionate)を合成し、カラムクロマト分離により幾何異性体1種を結晶として単離し、吸収及びC-13NMRスペクトルからα構造と決定した。このα異性体についても水溶液中で光照射を行った結果、Co-C結合錯体の生成が確認できたので、単結晶についてX線構造解析を行った。その結果、配位Me_2-eddpの2つのカルボキシル基の一方で光脱炭酸反応が起こり、Co-C結合が形成していることを確証することができた。昨年度行ったeddp錯体の光照射では、異性化反応を伴ったが、Me_2-eddpでは異性化は見られなかった。さらに、α-[Co(Me_2-eddp)(en)]clの光学分割を試みた結果、α-ブロモ-(d)-カンファーπ-スルホン酸銀を分割剤として用いたジアステレオ塩溶解度差法により光学分割に成功した。新規に得た光学活性体の絶対配置はCDデータに基づいて決定した。また、この光学活性体の光照射をラセミ体と同様の方法で行った結果、全くラセミ化することなく光学活性なCo-C結合錯体を得ることができた。吸収及びCDスペクトルデータから、この錯体の幾何構造及び絶対配置を推定することができた。Me_2-eddp錯体の光反応は完全に立体保持で進行することが示された。昨年度に引きつづき本年度新しく得られたCo-C結合錯体に関する新しい知見は、今後この種の錯体の光反応機構及び錯体の反応性を明らかにして行く上で、極めて重要となる。
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